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米国・一般紙が伝えたACC/i2 Summit 2009:気になる見出し斜め読み
コレステロール代謝改善薬のスタチンには毎回多くの一般紙が注目しており,実際に紙面で取り上げられる確率も高い。最先端の注目演題が発表されるLate-Breaking Clinical Trialsのセッションの中で,今回スタチンに関する演題はロスバスタチンで2題,アトルバスタチンで2題と,合計4題にのぼり,学会参加者の関心も高かった。これらの中で一般紙が最も注目したのは,ロスバスタチン(商品名:クレストール)が静脈血栓リスクを抑制することを確認したJUPITER試験の結果だった。
Crestor lowers risk of deep-vein clots without bleeding
It is first drug to stop thrombosis safely
クレストールが出血の副作用なく深部静脈血栓リスクを減少
血栓症を安全に予防できる初の薬剤
Cholesterol drugs may cut risk of clots
A possible alternative to treatments that can cause hemorrhaging
コレステロール治療薬が血栓リスクを低下させる可能性
出血の危険を伴う既存薬に代わる選択肢となるか
次は,心房細動患者の脳卒中リスクを抑える治療法について検討したACTIVE A試験だ。上記のNew York Times同様,リスクの低下を"reduce"ではなく"cut"というより短い単語にしているところが,いかにも新聞の見出しらしい。
Plavix and Aspirin cut stroke and heart risk
プラビックスとアスピリンの併用で脳卒中や心臓病のリスクが減少
(プラビックスは商品名。一般名はクロピドグレル)
1つの錠剤の中にアスピリン,スタチン,さらに3種類の降圧薬が含まれている,まさに究極の合剤 "polypill" を使った試験結果にも関心は集まった。配合されている薬はどれも安価なため,当然のことながら医療経済面からも注目された。
"Polypill" slashes heart attack and stroke risk
Study: Inexpensive, simple solution could save millions
"Polipill" が心臓発作や脳卒中のリスクを大幅に減少
安価で単純な方法が何百万ドルもの節約を可能にするかもしれない
薬剤に関する報告ばかりが目に付く中,外科手術で存在感を示したのがSTICH試験だ。これまで,拡大した心臓を手術で正常な大きさにシェイプすれば心機能によい影響があると考えられていたが,残念ながらその仮説には根拠はないことが明らかになった。この試験は本学会の開催前から注目度が高かった。とはいえ,これが一般紙でもニュースになるというところは,心臓病に対する米国人の関心の高さを表していると言えるかもしれない。
Reshaping the heart is no help
A procedure for heart failure had once seemed promising
心臓の再形成は助けにならない
有望と思われていた心不全への手術法だったが…
(越山みどり)