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冠動脈バイパス術に心室再建術を併用してもベネフィットはない

Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure(STICH試験)

冠動脈バイパス術に心室再建術を併用してもベネフィットはない

 梗塞により拡大した心臓を外科的に小さくし,心機能を改善させようという心室再建術(SVR)は,虚血性心不全に対して行われる特殊な方法だ。この手技は冠動脈バイパス術(CABG)と併せて行われることが多いが,これらの併用が有効であることを示す明確なエビデンスはなかった。本学会では,SVRとCABGの併用とCABG単独とを比較した初の大規模臨床試験STICH試験の結果がデューク大学メディカルセンターのRobert H.Jones氏から報告され,大きな関心を呼んだ。

 対象となったのは,CABGが適応可能で,左室駆出率の低下している冠動脈疾患患者1,000名(年齢中央値62歳,男性85%)。全員が至適薬物療法にCABG単独またはCABG+SVR併用を追加する治療に割り付けられた。左室収縮末期容積に対する効果は,CABG単独群が6%の低下だったのに対し,SVR併用群は19%低下し,SVR併用群で有意に改善することが確認された。しかし,心症状や運動耐容能の改善では両群間に差はなく,一次エンドポイントである死亡または心原性の入院でも差はみられなかった。このように,本試験結果はCABGにSVRを併用してもベネフィットは得られないことを示すものとなった。

 以上からJones氏は"Now we know that with good, intensive medical therapy and very good revascularization, there is no intrinsic value to SVR over bypass surgery alone."と結論付けた。STICH試験では,至適薬物療法単独群とCABGを追加する群とを比較する試験も行われており,その結果が待たれている。(萩原 充)

■試験の概要

対象   CABGが適応可能な冠動脈疾患患者1,000名
 ・左室駆出率≦35%
 ・瘢痕化した機能不全組織を前壁-心尖部に有する
 ・SVR適応可能
     
方法   国際多施設共同(23カ国96施設)・無作為化比較対照試験
 CABG群:499名
 CABG+SVR群:501名
     
追跡期間   4年(中央値)
     
結果
 

数値はいずれもCABG群vs. CABG+SVR群

一次エンドポイント
・死亡または心原性の入院
 59% vs. 58% p=0.90

その他の主な項目
・4カ月後の左室収縮末期容積指数の変化
  (CABG群212例,CABG+SVR群161例)
 82→77mL/m2(-6%)vs. 83→67mL/m2(-19%) p<0.001
・心症状
 CCS狭心症重症度分類 両群ともクラス1.7(平均)の改善
 NYHA分類(心不全症状の分類) 両群ともクラス1(平均)の改善
・運動耐容能(6分間歩行試験による)
 48m vs. 52m p=0.80

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