ニュース
スタチンの新たなベネフィット:静脈血栓塞栓症リスクが著明に低下
Justification for Use of Statins in Prevention: an Intervention Trial Evaluating Rosuvastaitn(JUPITER試験)
スタチンが動脈硬化性の心血管病のリスクを低下することはよく知られているが,静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク低下にも有効か否かについては,まだ無作為化試験によるエビデンスはなく,明確な結論は出ていない。VTEは心筋梗塞や脳卒中同様,重篤な疾患であることから,ハーバード大学・ブリガムアンド ウィメンズ病院のRobert J.Glynn氏らは,ロスバスタチンを用いた大規模臨床試験JUPITERの二次エンドポイントとしてVTEを設定し,その抑制効果を検討。今回のACCでその結果を報告した。本試験の一次エンドポイント(心血管イベント)については,すでにロスバスタチンによる著明な抑制効果が報告されている。
対象は,脂質値は正常だが血管炎症のみられる健常者約17,800人で,これらの被験者が無作為にロスバスタチン群とプラセボ群に分けられた。
解析の結果,症候性VTEの発症はプラセボ群60人に対し,ロスバスタチン群は34人と少なく,ロスバスタチン群で有意な43%の低下が確認された。VTEの誘因となる癌や入院,手術,外傷のあった人だけを対象とした解析でもロスバスタチン群で有意な低下が確認され,それらの誘因がない人では低下傾向に留まった。一方,出血リスクは両群間で差がなかった。
ロスバスタチンの服用でVTEリスクの低下が認められたことから,Glynn氏は,“Including consideration of VTE, in addition to conditions caused by arterial thrombosis such as heart attack and stroke, increases the estimated benefits associated with statin use.”と述べ,スタチンの新たなベネフィットが得られたことを強調した。(萩原 充)
■試験の概要
対象 | 心血管病の既往のない健常者17,802人(男性50歳以上/女性60歳以上) LDLコレステロール<130mg/dL,高感度CRP≧2.0mg/L |
|||||||||||||||||||||
方法 | 多施設共同・無作為化二重盲検プラセボ対照試験 ロスバスタチン群(20mg/日):8,901名 プラセボ群:8,901名 |
|||||||||||||||||||||
追跡期間 | 1.9年(中央値) | |||||||||||||||||||||
結果 |
・出血リスク ロスバスタチン群258例 vs. プラセボ群275例 p=0.45 |