ニュース
複合ビタミンを毎日服用しても50歳以上男性の心血管リスクは減少せず(The Physicians' Health StudyⅡ)
A Randomized Trial of a Multivitamin in the Prevention of Cardiovascular Disease in Men: The Physicians' Health Study II

米国の男性医師を対象とした大規模臨床試験で,複合ビタミンを10年以上の長期にわたって服用しても,心血管イベントが減少しないことがわかった。米国のブリガム・アンド・ウィメンズ病院Howard D. Sesso氏によって報告された。
試験の対象は50歳以上の米国の男性医師14,641人で,このうち7,641人は既に実施されたThe Physicians' Health Study I(PHS I)から引き続き参加した。PHS Iではアスピリンによる心筋梗塞の有意な減少が示されたが,βカロチンによるがん予防は利益も害もないという結果だった。The Physicians' Health Study II(PHS II)では,対象をまずビタミンE群とプラセボ群に無作為に割り付けて効果を比較し,さらに両群をともにビタミンC群とプラセボ群に各々割り付けて検討した(全4群:ビタミンE+C,ビタミンE単独,ビタミンC単独,プラセボ。ビタミンE単独とビタミンC単独の心血管イベント抑制効果は認められないことが報告済み)。今回は,この4群をそれぞれ複合ビタミン剤を追加投与するグループとプラセボを追加投与するグループに割り付け(各4グループ),複合ビタミン剤を投与した4グループの合計(複合ビタミン群)とプラセボを投与した4グループの合計(プラセボ群)を比較した。
その結果,一次エンドポイントである主要心血管イベント(非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+心血管死)の発症率は,複合ビタミン群とプラセボ群の間で有意差はなかった。一方,もう1つの一次エンドポイントであるがんは,複合ビタミン群で有意に減少した(1,290人 vs. 1,379人)。
これらの結果を受けてSesso氏は,「複合ビタミンの服用は主要心血管イベントに対していかなる効果もなかった。複合ビタミンを毎日服用する理由は,ビタミンとミネラルの欠乏を防ぐためと考えられる」とし,“The majority of men in our trial appeared to have, on average, good dietary habits. The question remains about how the long-term cardiovascular effects of daily multivitamin use might change among people with a wider range of nutritional status”と語った。(松田隆志・医学ライター)
■試験の概要
対象
50歳以上(平均年齢64歳)の米国の男性医師14,641人
方法
無作為化二重盲検プラセボ対照要因*試験,ITT解析
*複数の治療を組み合わせて検討する試験デザイン
・複合ビタミン群:7,317人
※ビタミンE+C+複合ビタミン剤,ビタミンE+複合ビタミン剤,ビタミンC+複合ビタミン剤,プラセボ+複合ビタミン剤の4グループの合計
・プラセボ群:7,324人
※ビタミンE+C+プラセボ,ビタミンE+プラセボ,ビタミンC+プラセボ,プラセボ+プラセボの4グループの合計
追跡期間
平均11.2年
結果
<服薬コンプライアンス> 4年後77%,8年後72%,試験終了時67%(両群間に有意差なし) |
||||
複合ビタミン群 n |
プラセボ群 n |
ハザード比 (95%信頼区間) |
p値 | |
<一次エンドポイント> 主要心血管イベント(非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+心血管死) |
||||
876 | 856 | 1.01 (0.91-1.10) |
0.91 | |
すべての心筋梗塞 | 317 | 335 | 0.93 (0.80-1.09) |
0.39 |
すべての脳卒中 | 332 | 311 | 1.06 (0.91-1.23) |
0.48 |
心血管死 | 408 | 421 | 0.95 (0.83-1.09) |
0.47 |
全死亡 | 1,345 | 1,412 | 0.94 (0.88-1.02) |
0.13 |
すべての種類のがん | 1,290 | 1,379 | 0.92 (0.86-0.998) |
0.04 |