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院外心停止患者の自己心拍再開後の低体温療法(目標32℃)で6カ月後の転帰が改善
Hypothermia in Comatose Survivors from Out-of-Hospital Cardiac Arrest: Pilot trial comparing two levels of target temperature
院外心停止患者に対する低体温療法は,目標体温32℃の方が,34℃よりも6カ月後の転帰に良い影響を与えることがわかった。スペイン・ラパス大学病院のEsteban Lopez-de-Sa氏が明らかにした。
対象は,目撃者のいる院外心停止患者36人。さらに,「心停止から自己心拍再開までの時間<60分」「18歳以上」「初期リズムが心室細動/無脈性心室頻拍または心静止」も登録条件とした。目標体温32℃群と34℃群に無作為に割り付けて,どちらの低体温療法が転帰をより改善するか検討した。
その結果,一次複合エンドポイントである6カ月後の重度の介護依存のない生存は,目標体温32℃群で高い傾向が認められたが,両群間で有意差はなかった(44.4% vs. 11.1%,p=0.12)。しかし,初期リズムを心室細動/無脈性心室頻拍に限定した検討では,32℃群で一次複合エンドポイントの発現率が有意に高かった(61.5% vs. 15.4%,p=0.029)。
これらの成績からLopez-de-Sa氏は,このパイロット試験では,目標32℃の低体温療法が心室細動または無脈性心室頻拍による二次性の院外心停止の転帰を改善することが示唆されたとし,“The aim of the study was to provide initial information for future research about whether controlling hypothermia levels can improve outcome”と述べた。(松田隆志・医学ライター)
■試験の概要
対象
心疾患に関連すると思われる目撃者のいる院外心停止患者36人
・心停止から自己心拍再開までの時間<60分
・18歳以上
・初期リズムは心室細動/無脈性心室頻拍または心静止
方法
単一施設オープン試験
※低体温療法は<8℃の冷却生理食塩水の静注から開始し,続いて温度管理システムに連結した冷却カテーテルを下大静脈に留置した。低体温を24時間維持し,その後12~24時間の間に37℃に達するまで復温した。
・目標体温32℃群:18人(初期リズム:心室細動/無脈性心室頻拍13人,心静止5人)
・目標体温34℃群:18人(初期リズム:心室細動/無脈性心室頻拍13人,心静止5人)
結果
32℃群 n(%) |
34℃群 n(%) |
p値 | |
<一次複合エンドポイント> 6カ月後の重度の介護依存のない生存(Barthel Indexスコア*>60点) |
|||
全体 | --(44.4) | --(11.1) | 0.12 |
心室細動/無脈性心室頻拍 | --(61.5) | --(15.4) | 0.029 |
心静止 | 0(0) | 0(0) | 0.24 |
<二次エンドポイント> 6カ月後の死亡 |
|||
全体 | 10(55.6) | 16(88.9) | 0.03 |
心室細動/無脈性心室頻拍 | 5(38.5) | 11(84.6) | -- |
心静止 | 5(100) | 5(100) | -- |
6カ月後の神経学的予後(CPC**1~2) | |||
全体 | 9(50) | 4(22.2) | 0.08 |
心室細動/無脈性心室頻拍 | 9(69.2) | 3(23.1) | 0.02 |
心静止 | 0(0) | 1(20) | 0.2 |
*基本生活動作の評価法。食事・移乗などの10項目に配点し,100点は全自立,60点以上は部分自立となる。 **グラスゴー・ピッツバーグ脳機能分類。神経学的予後の指標で,スコア1は機能良好,スコア2は中等度障害となる。 |