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安定冠動脈疾患患者では,冠血流予備量比を指標とした経皮的冠動脈形成術により緊急血行再建術のリスクが大幅に減少(FAME2試験)
Fractional Flow Reserve-Guided PCI versus Medical Therapy in Stable Coronary Disease(FAME2)
安定冠動脈疾患に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)は,狭心症の症状は改善しても,主要有害心イベントの発生を抑制するかどうか,まだ分かっていない。今回,ベルギー・Onze-Lieve-VrouwziekenhuisクリニックのBernard De Bruyne氏は,冠血流予備量比(FFR)を指標にPCIの適応を判断した場合,PCIの施行で緊急血行再建術のリスクが大幅に減少することを明らかにした。
FFRとは狭窄部位前後の冠動脈内圧から求められる数値で,その狭窄によって起きている心筋虚血の程度を表す指標。血管造影検査が画像から狭窄を判定するのに対し,FFRは心筋に血液を送り出す能力から判定するため,より正確にPCIの適応を判断できると考えられる。
試験の目的は,安定冠動脈疾患患者に対し,FFRを指標としたPCI+至適薬物療法を行った場合の予後を,至適薬物療法のみと比較することだった。対象は,血管造影検査で1~3枝に狭窄が見つかり,PCI施行を予定している安定冠動脈疾患患者1,220人。これらの患者すべての狭窄部位でFFRを測定した。その結果,FFR≦0.80(機能的に有意な狭窄と判定)だった888人(73%)は,PCI+至適薬物療法群または至適薬物療法単独群に無作為に割り付けられた。FFR>0.80(機能的に有意な狭窄ではないと判定)の332人(27%)から無作為に抽出した166人は至適薬物療法のみを受けるレジストリー群とし,観察・追跡した。
一次エンドポイントは,12カ月後の主要有害心イベント(全死亡+心筋梗塞+緊急血行再建術のための計画外入院)。その発生率はPCI+至適薬物療法群で4.3%,至適薬物療法単独群で12.7%となり,PCI施行によって有意に予後が改善された(p<0.001)。特に,PCI+至適薬物療法群の緊急血行再建術の発生率は,顕著に少なかった(1.6% vs. 11.1%,p<0.001)。一方で,死亡率と心筋梗塞の発生率では,ほとんど差がみられなかった。またレジストリー群では,主要有害心イベントは3%の患者に発生したのみで,PCIを行わなくても予後良好であった。
本試験は,FFR≦0.80の患者でPCI施行の有無により主要有害心イベント発生率に大きな差が出たため,データ安全性モニタリング委員会の勧告を受け,2012年1月に早期中止となった。
De Bruyne氏は最後に “The data show that in patients with stable CAD and functionally significant stenoses as assessed by FFR, FFR-guided PCI plus MT decreases the need for urgent revascularisation when compared with MT alone. In contrast, in patients without ischaemia-producing lesions, outcome is favourable with MT alone”(CAD:冠動脈疾患,MT:薬物療法)と述べ,発表を終えた。(神尾 希)
■試験の概要
対象 | 血管造影検査で1~3枝に病変が見つかり,以下のいずれかの理由でPCI施行が予定されている安定冠動脈疾患患者1,220人 ・CCS(狭心症重症度分類)クラスI~IIIの安定狭心症 ・CCSクラスIVで安定している狭心症 ・虚血と診断されているが,胸痛がないか非定型的胸痛を有する ※除外:冠動脈バイパス術の既往,左室駆出率<30%,左主幹部病変のある患者 |
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方法 | 多施設オールカマー*無作為化比較試験 ・PCI+至適薬物療法群:447人(FFR≦0.80) ・至適薬物療法単独群:441人(FFR≦0.80) ・レジストリー群(至適薬物療法単独):166人(FFR>0.80) ※FFR≦0.80の患者888人を,PCI+至適薬物療法群または至適薬物療法単独群に無作為に割り付けた。 *治療効果や予後を予測するマーカー(本試験ではFFR)を測定し,その結果にかかわらずすべての患者を無作為化する試験デザイン |
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結果 <PCI+至適薬物療法群 vs. 至適薬物療法単独群>
<PCI+至適薬物療法群 vs. レジストリー群>
<至適薬物療法単独群 vs. レジストリー群>
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