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新規のMEK阻害剤trametinibはBRAF変異のある進行メラノーマ患者の生存期間延長に有効
Efficacy of trametinib, a potent and selective MEK inhibitor, in progression-free survival and overall survival, compared with chemotherapy in patients with BRAF V600E/K mutant advanced or metastatic melanoma(METRIC試験)
新規のMEK阻害剤であるtrametinibが,BRAF変異のある進行メラノーマ患者の無増悪生存期間と全生存期間を有意に延長することが分かった。従来の化学療法と比較したtrametinibの有効性を,仏・ギュスターヴ・ルシー研究所のCaroline Robert氏が報告した。
進行メラノーマ患者の約半数にみられるBRAF遺伝子の変異は,細胞内のBRAFというタンパク質を変異させる。BRAFは細胞増殖の促進に働くMAPキナーゼ経路の構成要素であり,変異したBRAFはこの経路を過剰に活性化してがん細胞を増殖させる。trametinibは同じMAPキナーゼ経路の構成要素で,BRAFによって活性化されるMEK1/2を選択的に阻害し,がん細胞の増殖を抑制するというものだ。
試験の対象となったのはBRAF V600E/K変異のある進行メラノーマ患者322人。これらの患者をtrametinib群または化学療法群(ダカルバジンまたはパクリタキセル)に,2:1の割合で無作為に割り付けた。化学療法群で疾患進行が認められた場合は,trametinib群にクロスオーバーした。
一次エンドポイントの無増悪生存期間は,trametinib群で4.8か月,化学療法群で1.4か月(p<0.001)となり,trametinib群で3カ月以上延長することが確認された。
次に二次エンドポイントの結果をみると,6カ月時点での全生存率はtrametinib群が81%,化学療法群が67%(p=0.0136)となり,trametinib群が有意に勝っていた。完全奏効または部分奏効が確認されたのは,trametinib群で22%,化学療法群で8%だった(p=0.01)。
何らかの有害事象はほとんどの患者にみられ,trametinib群で多かったのは発疹と下痢,化学療法群では悪心と疲労だった。投与中止または減量を必要とする有害事象は,trametinib群でそれぞれ35%,27%,化学療法群で22%,10%だった。
一方,グレード3または4の有害事象は両群とも少なく,MEK阻害剤によくみられる駆出率低下や心室機能障害,網脈絡膜症もそれぞれ14人(7%),1人(1%未満)と少なかった。BRAF阻害剤のvemurafenibに起因する有害事象として報告のある皮膚新生物,皮膚扁平上皮がんは,本試験では確認されなかった。
Robert氏は,“This is the first in a new class of targeted drugs that could benefit patients with melanoma who have BRAF mutations. The findings show that targeting the MEK molecular pathway is a viable strategy for treating many people with the disease” と述べ,さらに “Trametinib is likely to become another first-line treatment option for patients with advanced melanoma” と,期待感を示した。(神尾 希)
■試験の概要
対象 | 切除不能なステージIIICまたはIVで,BRAF遺伝子V600E/Kを有する進行メラノーマ患者322人 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
方法 | オープンラベル無作為化比較試験(第III相試験) ・trametinib群:214人(2mg 1日1回経口投与) ・化学療法群:108人(ダカルバジン 1,000mg/m2または パクリタキセル 175mg/m2を3週毎に静注) ※化学療法群で疾患進行が確認された場合はtrametinib群にクロスオーバー |
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結果
*各群でベースライン時に脳転移がなく,かつBRAF V600E変異を有する患者のグループに対する解析(trametinib群 n=178,化学療法群 n=95)。 |