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新規の分子標的薬 T-DM1により,進行したHER2陽性乳がん患者の無増悪生存期間が延長(EMILIA試験)
Primary Results from EMILIA, a Phase 3 Study of Trastuzumab Emtansine (T-DM1) vs Capecitabine and Lapatinib in HER2-Positive Locally Advanced or Metastatic Breast Cancer Previously Treated with Trastuzumab and a Taxane(EMILIA試験)
HER2陽性の進行性または転移性乳がんで,かつ薬物治療歴のある患者に対し,新規の分子標的薬 T-DM1が無増悪生存期間の延長に有効であることが分かった。米国・デュークがん研究所のKimberly L. Blackwell氏が報告した。乳がん細胞にあるHER2遺伝子の増幅やHER2タンパクの過剰発現(HER2陽性)は,患者の予後悪化と関連しており,より優れた治療法がさまざまに模索されていることから,新たな治療選択肢として注目される。
対象は,HER2陽性の局所進行または転移性乳がんで,タキサンとトラスツズマブによる治療歴のある患者991人。これらの患者を,T-DM1群または標準治療(カペシタビン+ラパチニブ)群に無作為に割り付けた。
一次エンドポイントの無増悪生存期間は,T-DM1群が9.6カ月,標準治療群が6.4カ月となり,T-DM1群の方が約3カ月延長した(p<0.0001)。さらに,奏効率,奏効期間,患者報告に基づく症状増悪までの期間も,T-DM1群の方が良好な成績となった。一方,まだ中間解析の段階だが,生存期間もT-DM1群で有意に延長していることが確認された。
グレード3以上の主な有害事象は,T-DM1群では血小板減少や肝機能の低下,標準治療群では好中球減少,下痢,手足症候群,嘔吐が多く,試験薬の減量はT-DM1群より標準治療群で多かった。
Blackwell氏はT-DM1治療の有効性について,“It was significantly better than a very effective approved therapy for HER2 overexpressing metastatic breast cancer”と述べ,”Patients don’t lose their hair from this drug. For patients facing metastatic breast cancer, this is a breakthrough”と,安全性の面からもこの新たな治療法は期待できるとし,報告を締めくくった。(中川ゆり子)
■試験の概要
対象 | HER2陽性の局所進行または転移性乳がん患者991人 ※タキサンとトラスツズマブによる治療歴あり |
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方法 | 国際共同無作為化比較試験 ・T-DM1群:495人 T-DM1 3.6mg/kg(静注),3週毎 ・標準治療群:496人 カペシタビン1,000mg/m2(経口),1日2回,第1~14日,3週毎, +ラパチニブ1,250mg/日(経口),連日投与 |
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追跡期間 |
・T-DM1群:12.9カ月(中央値) |
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結果
*中間解析 **症状の増悪は患者報告に基づく |