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救急外来で行う急性冠症候群の鑑別診断に冠動脈CT検査が有用
Rule Out Myocardial Ischemia/Infarction Using Computer Assisted Tomography(ROMICAT II試験)
救急外来を受診した胸痛患者が急性冠症候群か否かを鑑別するために,早期の冠動脈CTの実施が有用であることが無作為化比較試験によって明らかになった。冠動脈CTを用いると,従来の検査法による鑑別診断よりも病院滞在時間が短縮され,救急外来からの直接帰宅率は大幅に上昇した。米国・マサチューセッツ総合病院のUdo Hoffmann氏が報告した。
この試験は米国の9つの施設で実施された。対象は,胸痛により救急外来を受診し,急性冠症候群が疑われる患者1,000人。これらの患者を,冠動脈CTを行う群または心臓負荷試験などの標準検査を行う群に無作為に割り付けた。
一次エンドポイントの病院滞在時間は,標準検査群が平均30.8時間だったのに対し,冠動脈CT群は23.2時間と,7.6時間短縮した。一方,50%の患者が帰宅するまでの時間をみると,冠動脈CT群が8.6時間,標準検査群が26.7時間で,18時間もの短縮となった。二次エンドポイントの救急外来からの直接帰宅率は,冠動脈CT群が標準検査群と比べ4倍近くに高まり(46.7% vs. 12.4%),診断までの時間はほぼ半分に短縮された(10.4時間 vs. 18.7時間)。また,両群ともに急性冠症候群の見逃しはみられなかった。1人当たりの総治療費は変わらなかったが,救急外来での治療費は冠動脈CT群のほうが有意に少なかった。
Hoffmann氏は “Physicians benefit because they can discharge many patients from the overcrowded ER very quickly, with solid reassurance that they’re not having a heart attack, while the standard evaluation takes much longer to assess whether the symptoms stem from blockages in their arteries. Patients benefit from an earlier diagnosis and can safely go home from the ER earlier.”(ER:救急室)と述べ,冠動脈CTを用いた鑑別診断は医師,患者双方にとって有用であるとの考えを示した。(神尾 希)
■試験の概要
対象 | 急性冠症候群(ACS)が疑われる胸痛により救急外来を受診した患者1,000人 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
方法 | 多施設オープンラベル無作為化比較試験 ・冠動脈CT群:501人 ・標準検査群:499人 |
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結果
*n=650 |