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慢性心不全患者へのスタチン投与で明らかな予後改善効果は確認できず

Sweden-based Controlled Rosuvastatin Multinational Trial in Heart Failure(CORONA試験)

慢性心不全患者へのスタチン投与で明らかな予後改善効果は確認できず

 スタチンが心血管イベントリスクを低下させることは,すでにさまざまな大規模臨床試験によって証明されている。本学会では,至適薬物治療を受けている慢性心不全患者でも,スタチンを投与することで心血管イベントリスクが低下するかどうかを検討した大規模臨床試験の結果が発表され,参加者の注目を集めた。発表したスウェーデン・エーテボリ大学のAke Hjalmarson氏は,本試験を実施した理由として,"Because patients with symptomatic heart failure were excluded from past placebo-controlled trials with statins, the benefits and risks of statins in the treatment of heart failure remain uncertain"と述べている。

 試験には21カ国371施設が参加。対象は虚血性心不全(収縮不全)で至適薬物治療を受けている60歳以上の高齢患者5,011例。これらの患者を無作為にロスバスタチン群とプラセボ群に割り付け,2.7年(中央値)追跡した。

 試験の結果,一次エンドポイント(心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中)はロスバスタチン群27.5%,プラセボ群29.3%となり,両群間に有意差は認められなかった。二次エンドポイントの総死亡,冠動脈イベントについても有意差はみられなかったが,入院数では,全入院,心血管イベントによる入院,心不全悪化による入院のいずれもがロスバスタチン群で有意に減少した。さらに,致死性・非致死性の心筋梗塞および脳卒中については,ロスバスタチン群で減少傾向が認められた。

 本試験では,主要なエンドポイントで有意差が得られなかったが、その理由についてHjalmarson氏は,対象が"Very sick group of patients with high annual mortality (10%) on optimal hart failure therapy"であったことや,"Few atherothrombotic events which may not have provided the opportunity for the anti-atherothrombotic properties of statins to alter outcome"などを挙げている。

 同試験の結果は,発表当日にThe New England Journal of Medicineのオンライン版に掲載された。

■試験の概要

<対象>  

心不全の至適薬物治療を受けている慢性虚血性心不全(収縮不全)患者5,011例

・NYHA心機能分類IIで駆出率35%以下またはNYHA分類III~IVで駆出率40%以下
・年齢60歳以上

     
<方法>   多国間多施設共同・前向き二重盲検無作為化比較試験
ロスバスタチン群 :2,514例(10mg/日)
プラセボ群 :2,497例
     
<患者背景>  
平均年齢 :73歳
女性 :24%
平均駆出率 :31%
     
<追跡期間>   2.7年(中央値)
     
<結果>
  ロスバスタチン群 プラセボ群 p値
一次エンドポイント* 27.5% 29.3% 0.12
二次エンドポイント
総死亡
冠動脈イベント**
全入院数
心血管イベントによる入院
心不全の悪化による入院

28.9%
21.6%
3,694回
2,193回
1,109回

30.3%
23.5%
4,074回
2,564回
1,299回

0.31
0.18
0.007
<0.001
0.01
その他(post hoc解析)
致死性・非致死性の心筋梗塞/脳卒中

9.0%

10.6%

0.05

*心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中

**突然死+致死性・非致死性心筋梗塞+不安定狭心症+経皮的冠動脈インターベンション+冠動脈バイパス術+ICDによる除細動+心肺停止からの蘇生

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