ニュース
カテーテル・デリバリーによる梗塞心筋への自家骨格筋芽細胞移植の1年後成績は有望
Safety and feasibility of transplanting autologous skeletal myoblasts: Final one-year results of the Catheter-Based Delivery of Autologous Skeletal Myoblasts for Ischemic Cardiomyopathy(CAuSMIC 試験)

近年,再生医療の一環として,骨格筋に存在する筋芽細胞を心筋へ移植することで,虚血性心筋症患者の心機能の改善を試みる研究が進んでおり,臨床試験を実施する段階に入っている。すでに報告されている複数の研究では,患者自身の筋肉組織から分離・培養した自家骨格筋芽細胞(ASM)を,開胸手術により虚血心筋部に注射針で直接注入し,効果を検討している。しかし,この方法は侵襲性が高く,注入部位に炎症を起こして不整脈のリスクを高めるなどの問題点があった。そこでカリフォルニア大学のNabil Dib氏らは,三次元画像ガイド下によるカテーテル・デリバリーシステムを利用してASMを注入する方法を考案。その安全性と実現可能性を検討するため,無作為化比較試験を行った。対象となったのは虚血性心筋症による慢性心不全患者23例。このうち12例は至適薬物療法を継続しつつ患者自身の大腿部の筋肉から採取・分離・培養したASMを移植し(ASM群),残りの11例は至適薬物療法のみとし(コントロール群),12カ月追跡した。
ASM移植には全例が成功。注入に関連する合併症もみられず,本法が安全に施行可能であることが示唆された。さらに追跡後の成績では,両群ともに死亡や心筋梗塞再発,脳卒中の発生はなく,懸念された心室性不整脈はASM群で2例,コントロール群で1例となり,特に差は認められなかった。QOLは,コントロール群と比べASM群で有意に改善。さらに移植前と比べ生存細胞が増加する傾向もみられた。また,オーバーワークによって拡大していた左室サイズは,コントロール群では若干大きくなったのに対し,ASM群ではわずかながら縮小していた。
これらの成績についてDib氏は,"These data demonstrate the safety and suggestively positive outcomes of ASM transplantation"と虚血性心筋症へのASM治療は期待できることを強調。さらに,"And warrant initiation of larger Phase 2, double-blind, placebo controlled clinical trials to demonstrate the efficacy of myoblast transplantation in heart failure patients”と述べ,次のステップに進むことを表明した。
■試験の概要
<対象> | 下記の条件を満たす慢性心不全(虚血性心筋症)患者23例 ・心筋梗塞の既往 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
<方法> | 前向きオープンラベル無作為化比較試験(第I相試験)
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
<結果> | 1)安全性 2)有効性
*ASM群 vs コントロール群(t検定) **ミネソタ心不全QOL調査票 |