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コラム:米国・一般紙が伝えたAHA2008:気になる見出し斜め読み
AHA2008で発表されたトピックスは米国の一般紙でどのように伝えられたのか?
心臓病の多い米国では,AHAでの発表は一般市民にとっても身近な話題として伝えられる。
一般各紙の見出しには英語独特の表現も満載で,生きた英語を学ぶ絶好の教材でもある。
早速,その見出しを紹介していこう。
まずは4年ぶりにAHA年次学術集会が開催されたニューオリンズの地元紙から。
ハリケーン・カトリーナの襲来以降,大型コンベンションの開催がめっきり減ってしまったニューオリンズにAHAが戻ってきたことを喜ぶ見出しだ。ハートマークに「AHA」と「心臓が脈打つ=元気になる」というニュアンスをかけた表現がキュートだ。
“N.O. has ♥
The heart association convention, that is.
And officials are relishing the mega-meeting, a rarity
in the city’s once-booming convention business”
ニューオリンズが活気(ハート)を取り戻した
AHAこそがその源だ
かつては盛んだったコンベンションビジネスだが,今となってはめったにないこのメガ学会をニューオリンズ当局は享受している
では,本題だ。今回のAHAで最も注目度が高かったJUPITER試験の結果から。コレステロール値は正常だが,炎症マーカーのCRP値が高い健常者に高脂血症治療薬であるスタチン(ロスバスタチン)を投与して心血管イベントリスクを下げられるかが検討された。試験の結果,CRP値の高い健常者はスタチンの服用により心血管イベントや総死亡リスクが大幅に低下することが示された。
“Statin study yields promising results ---Cholesterol pill cut risk of heart attack”
スタチンの投与試験で有望な結果---コレステロール低下薬が心臓発作のリスクを減少
“Cholesterol-fighting drugs show wider benefit”
抗コレステロール薬に一層のベネフィットのあることが示された
各紙がこぞってスタチンのベネフィットの大きさを強調する一方で,USA Todayはそのコストが高いという問題点を皮肉っている。”Crestor would save lives”の後には,” if it were reasonable, but it costs”といった内容の一文が省略されており,リーズナブルであればもっと多くの人を救えるのにという含みが読み取れる。
“Crestor would save lives --- at $500,000 each”
クレストール(注:ロスバスタチンの商品名)が多くの命を救うだろう
---ただし1人につき50万ドル
一方,肥満児やコレステロールの高い子供の血管が,まるで中高年のように厚くなっており,心血管病のリスクがすでに高まっていることを示したショッキングな報告にも関心が集まった。
“Heart disease warning signs are found in obese or high cholesterol children”
心臓病の危険信号が肥満児やコレステロールの高い子供にも見つかる
“Artery risks rise in obese kids --- Study finds clogging like in middle age ”
動脈のリスクが肥満児で上昇---まるで中年のような血管の詰まりが確認される
“Obese kids have arteries of older man”
肥満児は老人の動脈を持つ
最後に,ビタミンサプリメントの心血管病予防効果を検討したPhysicians' Health Study IIの結果から。大きな落胆とともにこの記事を読んだ米国市民も多かったのではなかろうか。
"Study: Vitamin E doesn't prevent heart 'events' --- Vitamin C again found lacking"
試験結果より:ビタミンEは心臓のイベントを予防しない
--- ビタミンCの予防効果はまたも否定される