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ビタミンC・ビタミンEサプリメントに心血管病の予防効果は認められない
Physicians' Health Study II
これまでの基礎研究や観察研究の結果では,ビタミンC,ビタミンEといった抗酸化物質は,心血管病や癌の発症リスクを減少させることが示されている。一方,米国食品医薬品局(FDA)が2002年に行った調査によると,米国では全成人の半数以上が健康のために何らかのサプリメントを飲んでおり,なかでもビタミンC・Eを飲んでいる人は多く, 12~13%にのぼるという。そこで,ブリガム・アンド・ウィメンズ・ホスピタルのJ. Michael Gaziano氏らは,これらのサプリメントが本当に健康によい影響を与えているかどうかを調べるため,大規模臨床試験Physician’s Health Study IIを実施した。
同試験はその名の通り,医師(男性)を対象に行われ,14,641人が「ともに実薬」「ビタミンCが実薬,ビタミンEがプラセボ」「ビタミンCがプラセボ,ビタミンEが実薬」「ともにプラセボ」の4グループに分けられた。平均8年の追跡後,「ビタミンCの有無」「ビタミンEの有無」でそれぞれ比較したところ,ともに主要心血管イベント発生率に全く差がみられなかった。また,心筋梗塞・脳卒中・心血管死・うっ血性心不全・狭心症・血行再建術・全死亡でも,全て有意な差は確認されず,ビタミンCやEのサプリメントによる心血管病の予防効果は否定された。
同試験の結果は,発表当日にThe Journal of the American Medical Association(JAMA)のオンライン版に掲載された。共同研究者で,論文の筆頭著者であるHoward D. Sesso氏は,“Despite promising findings from laboratory research and observational studies, our results from PHS II point to the need for large-scale, long-term clinical trials testing the antioxidant hypothesis.”と述べ,大規模臨床試験の重要性を指摘した。
なお,同試験では癌の予防効果についても同時に検討が行われていた。本学会の1カ月後に,同じくJAMAのオンライン版でその結果が発表され(Gazianoら),ビタミンCとビタミンEは男性の前立腺癌および全癌の発症率に対しても全く抑制効果を示さなかったことが報告された。
同試験の対象が男性医師限定だったという点は考慮されねばならないが,各種ビタミンサプリメントの医学的位置付けをめぐって,さらなる議論を呼びそうだ。
■試験の概要
対象 | 50歳以上の米国在住男性医師14,641例 | |||||||||||||||||
方法 | 無作為化二重盲検プラセボ対照試験
※実薬はビタミンC:500mg/日,ビタミンE:400IU/隔日 |
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追跡期間 | 8.0年(平均) | |||||||||||||||||
結果 | intent-to-treat解析
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