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慢性心不全患者に対する運動療法:予後への効果は改善傾向に留まるものの安全性は証明

Efficacy and Safety of Exercise Training as a Treatment Modality in Patients with Chronic Heart Failure: Results of a Randomized Controlled Trial Investigating Outcomes of Exercise Training(HF-ACTION試験)

慢性心不全患者に対する運動療法:予後への効果は改善傾向に留まるものの安全性は証明

 運動療法が心不全患者のQOL(生活の質)や運動能を改善することは,いくつかの比較的小規模な試験によって示されている。また,死亡率の低下といった予後への効果は,複数の試験データを統合したメタ解析から改善傾向が認められている。しかし,これらの結果は試験法などの点から十分に信頼性があるとは言い難い。そこで,デューク大学メディカルセンターのChristopher M. O'Connor氏らは,慢性心不全患者に運動療法を行うことで予後が改善するかどうかを明らかにするため大規模臨床試験を実施。対象患者を,通常治療に運動療法を加える群(運動療法群)と通常治療だけの群に無作為にわけ,約2.5年追跡した。

 その結果,一次エンドポイント(総死亡+全入院)と二次エンドポイント(心血管死+心血管病による入院,心血管死+心不全による入院,総死亡)はいずれも両群間で有意差がなく,運動療法群で低下傾向がみられるに留まった。しかし,あらかじめ定めた予後規定因子で補正すると,運動療法群のイベント発生率(一次エンドポイントおよび二次エンドポイントの心血管死+心不全による入院)は通常治療群に比べて有意に低くなった。さらに試験開始1年後の心肺運動負荷試験で測定した運動持続時間は,通常治療群の0.2分に対し,運動療法群では1.5分となり,有意な延長効果が確認された(p<0.0001)。また,運動療法による重篤な有害事象の発生はみられず,運動療法の安全性が証明された。

 O'Connor氏は,“Exercise training confers clinical benefits without excess risk for heart failure patients.”と述べた上で,“This is the most definitive study to guide policymakers, physicians, healthcare providers and health systems in regard to recommendations for exercise training in patients with heart failure.”とし,本試験により慢性心不全患者に対する運動療法のベネフィットが認められたことを強調した。

■試験の概要

対象   至適薬物療法を受けている運動可能な慢性心不全患者2,331例
〔左室駆出率≦35%,ニューヨーク心臓協会心機能分類(NYHA)II~IV度〕
     
方法   国際多施設共同(3カ国82施設)・無作為化比較対照試験
運動療法群:1,159例 ※専門家指導下および自宅での運動トレーニング
通常治療群:1,172例
     
追跡期間   2.5年(中央値)
     
結果   intention-to-treat解析
・一次エンドポイント(ハザード比)
  総死亡+全入院:0.93(95%信頼区間 0.84~1.02) p=0.13
※予後規定因子補正後:0.89(95%信頼区間0.81~0.99) p=0.03
・二次エンドポイント(ハザード比)
  心血管死+心血管病による入院: 0.92(95%信頼区間0.83~1.03) p=0.14
※予後規定因子補正後:0.91(95%信頼区間0.82~1.01) p=0.09
心血管死+心不全による入院:0.87(95%信頼区間0.75~1.00) p=0.06
※予後規定因子補正後:0.85(95%信頼区間0.74~0.99) p=0.03
  総死亡:0.96(95%CI 0.79~1.17) p=0.70
  安全性:
 
重篤な有害事象 運動療法群(%) 通常治療群(%)
1回以上の心血管イベント* 37 40
1回以上のICD作動** 22 23
身体活動後の入院 3 2
腰部/骨盤骨折による入院 0.3 0.6
身体活動後・推定3時間以内の死亡 0.4 0.4

*心不全悪化,心筋梗塞,不安定狭心症,治療に関連する重篤な不整脈,脳卒中,一過性脳虚血発作
**植込み型除細動器

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