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LDLコレステロール値は正常だが血管炎症のある健常者に対しスタチンが心血管イベントを劇的に抑制
Justification for Use of Statins in Primary Prevention: an Intervention Trial Evaluating Rosuvastaitn(JUPITER試験)
LDLコレステロール高値は心血管病の重要なリスク因子と考えられているが,LDLコレステロール値が正常でC反応性タンパク(CRP:血管壁などの炎症を示すマーカー)が上昇しているだけの健常者でも,スタチンの服用で心血管イベントリスクが著明に低下することが報告され,本学会最大のトピックとして話題を呼んだ。
発表したのはCRPの研究でこれまでも多くの成果を上げてきたハーバード大学のPaul M. Ridker氏。対象となったのはLDLコレステロール値が正常で,高感度(hs)CRP値が上昇している健常者17,000人以上で,これらの被験者がロスバスタチン投与とプラセボ投与の2群にわけられた。本試験はロスバスタチン群の優位性が早期に認められたため途中で中止され,追跡期間(中央値)は2年弱と短かった。
試験開始12カ月後のLDLコレステロール値は,ロスバスタチン群で半減し,hsCRP値も著明に低下した。一次エンドポイントの複合心血管イベントは,ロスバスタチン群でプラセボ群に比べて有意に44%も低下し,二次エンドポイントの総死亡でも20%の有意な低下が確認された。一方,もともと正常だったLDLコレステロール値がロスバスタチン群ではさらに低下したことから安全性が懸念されたが,重篤な有害事象は両群間で差がなかった。ただし,糖尿病の新規発症はロスバスタチン群で有意に高くなった。
以上の結果から,Ridker氏は,“Not only do we confirm that apparently healthy men and women with elevated hsCRP are at high risk of cardiovascular events, but we demonstrate that a simple therapy can reduce their risk of heart attack, stroke or cardiovascular death.”と述べ,健康にみえてもhsCRP値が上昇している人は心血管リスクが高く,スタチンによる心血管イベントの一次予防が有効との見解を示した。
■試験の概要
対象 | 心血管病の既往のない健常者17,802名(男性50歳以上/女性60歳以上) LDLコレステロール<130mg/dL,hsCRP≧2.0mg/L |
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方法 | 多施設共同・無作為化二重盲検プラセボ対照試験 ロスバスタチン群(20mg/日):8,901名 プラセボ群:8,901名 |
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追跡期間 | 1.9年(中央値) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
結果 | intention-to-treat解析
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