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ARBの心血管イベント抑制効果はACE阻害薬に匹敵,ただし両剤の併用には注意が必要
Ongoing telmisartan alone and in combination with ramipril global endpoint trial(ONTARGET試験)
レニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬であるACE阻害薬と,同じくRA系抑制薬のアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)はともに臨床で広く使われている降圧薬だが,ACE阻害薬は心血管イベントを抑制することが証明されているものの,後発のARBには確固たる証拠がなかった。ARBはACE阻害薬に匹敵する心血管イベント抑制効果を有するのか,あるいは両剤を併用してRA系をさらに強力にブロックした場合,より効果が増すのか? まだ答えの出ていなかったこれらの問いに対し,明確な回答を示した大規模臨床試験の結果が,今回のACCで米国・マクマスター大学のSalim Yusuf氏によって発表され,多くの参加者の注目を集めた。
本試験では,心血管系疾患の既往や糖尿病のあるハイリスク患者(正常血圧者)を,テルミサルタン(ARB)単独群,ramipril(ACE阻害薬)単独群,両剤の併用群の3群に無作為に割り付け,4年半追跡した。試験の結果,一次エンドポイントの心血管イベント発生率はテルミサルタン単独群とramipril単独群で同等であり,ARBがACE阻害薬に匹敵する心血管イベント抑制効果を有することが証明された。また,有害事象による治療中止はテルミサルタン単独群がramipril単独群に比べて有意に低く,安全性はARBのほうがACE阻害薬よりも良好であることが示された。一方,併用群では心血管イベント発生率がramipril単独群と比べて改善せず,むしろ有害事象が増加することが明らかとなり,併用療法の有用性が否定される結果となった。
以上からYusuf氏は “This study is of clinical importance because it demonstrates that telmisartan is an effective and safe alternative to ramipril”と述べ,ARBの有用性に確証を示した。一方,併用群で有害事象が増加したことについてオックスフォード大学のPeter Sleight氏は,“In general, combination of an ACE-inhibitor and an ARB should not be used in the types of patients enrolled in the ONTARGET study”とコメントし,ACE阻害薬とARBの併用に注意を促した。
■試験の概要
<対象> | 心血管系疾患の既往または糖尿病のある正常血圧値の患者25,620例 | |||||||||||||||||||||||||||||
<方法> | 国際多施設共同・無作為化二重盲検比較試験,Intent-to-treat解析 テルミサルタン単独群:8,542例 ramipril単独群:8,576例 テルミサルタン+ramipril併用群:8,502例 |
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<追跡期間> | 56カ月(中央値) | |||||||||||||||||||||||||||||
<結果> | (1)テルミサルタン単独群 vs. ramipril単独群(非劣性検定)
(2)テルミサルタン+ramipril併用群 vs. ramipril単独群(優越性検定)
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