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家庭用AEDを備えても生存率の向上につながらない

Home automated external defibrillator trial(HAT試験)

家庭用AEDを備えても生存率の向上につながらない

 近年,公共の場への自動体外式除細動器(AED)の設置が進んでいるが,突然死の多くは自宅で起きている。もし突然死のリスクがある患者の自宅に家庭用AEDを備えたら,突然心停止からの蘇生率を向上させることができるかもしれない。この仮説を立証するため,米国・シアトル心臓研究所のGust H. Bardy氏らは,家庭用AEDを用いた大規模臨床試験を実施した。

 試験では,前壁梗塞の既往があり植え込み型除細動器(ICD)が適応とならない患者が対象となった。AED群では家庭用AEDを自宅に置き,突然心停止が起きた場合は家族らがAEDによる除細動を行った後に救急医療システムへ連絡することとし,家庭用AEDを用いないコントロール群では,突然心停止が起こったらすぐに救急医療システムに連絡することとした。試験の結果,一次エンドポイントである総死亡率はAED群とコントロール群とで差はなく,AED群で生存率の改善はみられなかった。

 この結果についてBardy氏は“the rate of Sudden Cardiac Arrest(SCA) occurring at home was much less than expected and only one-half of the SCAs that occurred at home were witnessed by a spouse/companion.”と述べ,AED群でも突然心停止が起きた時にそばに誰もいなかった率が高かったことを強調した。さらに“modern drug therapy after a myocardial infarction dramatically decreased the death rates (half of predicted) making it unlikely to prove the trial’s hypothesis”と考察し,家庭用AEDが生存率の改善につながらなかった理由がAED自体の機能に起因するものではないと補足した。

■試験の概要

<対象>   前壁心筋梗塞既往かつICD非適応の7,001例
     
<方法>   国際多施設共同・無作為化比較試験,intent-to-treat解析
 AED群:3,495例
  突然心停止時:家庭用AEDによる除細動→
  救急医療システムへ連絡→心肺蘇生術
 コントロール群:3,506例
  突然心停止時:救急医療システムへ連絡→心肺蘇生術
     
<追跡期間>   37.3カ月(中央値)
     
<結果>

  AED群 コントロール群 ハザード比(95%信頼区間)

一次エンドポイント
  総死亡 7.9% 8.5% 0.97(0.81~1.17)

二次エンドポイント
  心臓死 62% 57% 1.07(0.84~1.36)
  頻拍性不整脈死 38% 37% 1.01(0.75~1.37)
  心不全死 16% 12% 1.28(0.78~2.10)
  非不整脈死 7% 7% 1.00(0.50~2.00)
  非心臓死 36% 39% 0.91(0.67~1.23)
  不明 1% 4%

頻拍性不整脈死の発生場所
  自宅 57例 60例
  自宅(目撃者あり) 27例 31例
  その他の場所 25例 18例
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