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米国・一般紙が伝えたACC2008:気になる見出し斜め読み
意外に健闘? The Wall Street Journal

米国・一般紙が伝えたACC2008:気になる見出し斜め読み<br />意外に健闘? The Wall Street Journal

 ACC 2008で発表されたトピックスには米国の新聞各紙も関心を寄せた。学会期間中,USA Todayなどの新聞に前日のどの発表が取り上げられたかチェックしてみると,米国・一般市民の関心がどこに向いているのかがわかって興味深い。ACCのような大規模な医学会で発表される試験結果は,医療そのものへの影響だけでなく,医療保険サービスや株価への影響もあることから,一般紙にとっても見過ごせないものとなっている。

 それでは早速,各紙が取り上げたACC2008からのニュースの見出しを紹介していこう。

 まずは,わが国でも駅やデパートなどで見かけることが多くなった,自動体外式除細動器(AED)に関する大規模臨床試験「HAT」の結果だ。この試験は,心筋梗塞から生還した患者を対象に,自宅に家庭用AEDを置いて突然の心停止に備える群と,AEDは置かず救急医療サービスだけに頼る群に分け,死亡率を比較したもの。結果は大方の予想を裏切り,両群間に差は出なかった。発作が起こったときに誰もそばにいなかった率が高かったため,せっかくのAEDも使われようがなかったことをチクリと皮肉ったWall Street Journalの見出しが面白い。

■The Wall Street Journal, Apr. 2, 2008
"Home Heart Devices Sit Idle"
家庭用ハートデバイスに出る幕なし
■USA Today, Apr. 2, 2008
"Home defibrillators: Worth the price?
―Education may be cost-effective way to go, study finds"
家庭用除細動器:値段だけの価値はあるのか?
―結局は患者教育がコスト・エフェクティブなのかもしれない
■The New York Times, Apr. 2, 2008
"Study Finds No Increase in Survival Rates With Home Defibrillators"
家庭用除細動器で生存率の向上は認められず

 次は80歳以上の高血圧患者でも,降圧薬治療によって脳卒中や全体の死亡率を抑制できることを証明した大規模臨床試験「HYVET」。

■USA Today, Apr. 1, 2008
"Hypertension: Never too old to benefit from treatment"
高血圧治療のベネフィットを得るのに歳を取りすぎているということはない

 一方,Wall Street Journalには抗肥満薬の冠動脈プラーク抑制効果を検討した試験「STRADIVARIUS」の結果,さらには軽症心不全患者を対象に両心室ペースメーカーによる心臓再同期療法(CRT)の有効性を検討した試験「REVERSE」の結果も掲載されるなど,ACC2008への注目度はここで取り上げた新聞のなかでピカイチだった。

■The Wall Street Journal, Apr. 1, 2008
"Sanofi Weight Drug Shows Mixed Coronary-Artery Data
サノフィの抗肥満薬の冠動脈試験結果は良くもあり悪くもあり

"Mild Heart-Failure Patients Benefit Little on CRT Devices"
CRTデバイスを軽症心不全患者にまで広げられる可能性はほとんどない

 最後に,今回のACCで各紙が最も紙面を割いた,コレステロール治療薬に関する比較試験「ENHANCE」について触れておこう。この試験では,新規薬剤である小腸コレステロールトランスポーター阻害薬と標準的治療薬のスタチンとの併用が,スタチン単剤と比べてアテローム抑制効果が優っているかどうかが検討された。「ENHANCE」は試験終了後の解析に時間がかかり,なかなか結果が発表されなかったことから,さまざまな憶測を呼んだという経緯がある。結局,指標とした2年後の頸動脈内膜中膜肥厚(IMT)は両群間で有意差がなく,新規薬剤を追加することによるメリットは証明されなかった。この結果の概要はACC開催前に公表されたため,今回のACCでは通常とは違う特別セッションのなかでの発表となった。この種の薬剤は,最終目標である予後改善効果を検討する大規模臨床試験の結果が最も重要とされており,「ENHANCE」の結果だけで評価が決まるわけではないが,発表翌日の新聞各紙には辛口の見出しがおどった。

 ここでは,「ENHANCE」の発表に続いて行われたパネルディスカッションでの厳しい意見に焦点を当てたNew York Timesの見出しを紹介しておこう。

■The New York Times, Mar. 31, 2008
"Panel Doubts Two Drugs Used to Fight Cholesterol
パネルはコレステロール治療の2剤併用療法に疑義を表明

 一方で,この試験ではベースライン時のIMTが正常範囲だったために差が出にくかったのではないかという,試験デザインそのものに対する疑問も出るなど,「ENHANCE」を巡る議論はなかなか収まりそうにない。

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