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Hot Topics --- At a Glance

飲酒で早期乳癌患者の再発や死亡のリスクが上昇

Alcohol Consumption Increase Risk of Breast Cancer Recurrence(LACE試験)

Hot Topics --- At a Glance

早期乳癌と診断されて1~3年が経っても治療後の再発がない女性1,900人を約6年間追跡した結果,飲酒により再発リスクが高まることが分かった。アルコール1日6g(ビール換算で150mL,ワイン換算で1/2杯程度)以上飲む人は全く飲まない人と比べ,乳癌の再発リスクが1.3倍,乳癌による死亡リスクが1.5倍に上昇した。閉経後や肥満がある場合,リスクはさらに高まるが,1日6gも飲まない人ではこれらが危険因子にならない。米国カイザーパーマネント研究部のMarilyn L. Kwan氏らが報告した。 Kwan氏は,「乳癌の既往のある女性は,お酒は週に3杯までに抑えるようにした方がいい。さらに閉経後でかつ過体重や肥満があるなら,特にそうすべきだろう」と提言した。

Kwan suggested, “Women previously diagnosed with breast cancer should consider limiting their consumption of alcohol to less than three drinks per week, especially women who are postmenopausal and overweight or obese.”

Key Words
diagnosed with:~と診断された
breast cancer:乳癌
consumption:摂取
postmenopausal:閉経後の
obese:肥満した

骨粗鬆症治療薬の経口ビスホスホネートに乳癌抑制効果の可能性

Oral Bisphosphonate and Breast Cancer: Prospective Results from the Women’s Health Initiative

米国閉経女性の大規模試験であるWHI(Women's Health Initiative)試験のデータ解析により,骨粗鬆症治療薬の経口ビスホスホネートの服用者は非服用者と比べ,浸潤性乳癌の発症リスクが30%以上も低いことが示された。一方で,非浸潤性乳癌のリスクはビスホスホネート服用者が非服用者の1.6倍だった。 この主任研究者であるハーバーUCLA医療センターのRowan Chlebowski氏は,「骨の健康のために,米国ではビスホスホネート系薬剤の処方箋が年間約3千万枚も書かれているが,それらの薬が乳癌の発症率を下げるかもしれないことは朗報だ。骨粗鬆症と乳癌の両方のリスク低下のために,それらはもっと使える可能性がある」と述べた。

“The idea that bisphosphonates could reduce breast cancer incidence is very exciting because there are about 30 million prescriptions for these agents written annually in the United States targeting bone health, and more could easily be used to counteract both osteoporosis and breast cancer,” said the study’s lead investigator, Rowan Chlebowski.

Key Words
bisphosphonates:ビスホスホネート系薬剤
incidence:発症率
prescriptions:処方箋
agents:薬剤
counteract:~の影響を弱める
osteoporosis:骨粗鬆症
lead investigator:主任研究者

乳癌ハイリスク女性の検診にMRI追加で早期癌発見率が有意に上昇

MRI Detects Breast Cancer at Earlier Stage

乳癌を発症しやすい遺伝子変異(BRCA1またはBRCA2の変異)をもつ女性は,マンモグラフィなどの一般的乳癌検診にMRIを追加することで,早期癌のうちに発見できる確率が有意に高まることが確認された。これは遺伝的乳癌ハイリスク女性約1,300人を対象に一般的乳癌検診にMRIを追加する群と追加しない群に分け,最長で6年間観察した結果である。カナダのサニーブルック健康科学センターのEllen Warner氏らが報告した。早期癌のうちに発見し,治療することで死亡率の減少につながる可能性もある。 Warner氏は,「今回の結果から,(乳癌の)リスクが高い女性や彼女らを診る医療機関に対し,よく行われる予防的乳房切除術の代替案として,MRIとマンモグラフィによる毎年の乳癌検診が妥当だということを,納得してもらえることを期待したい」と述べた。

“These results will hopefully convince high-risk women and their health care providers that breast screening with yearly MRI and mammography is a reasonable alternative to surgical removal of their breasts, which is commonly done to prevent breast cancer,” Warner said.

Key Words
hopefully:期待して
health care providers:医療機関
breast (cancer) screening:乳癌検診
reasonable alternative to:~の妥当な代替案
commonly:通例として,よく

ラパチニブとトラスツズマブの併用でHER2陽性転移性乳癌患者の生存期間が延長

Randomized study of Lapatinib Alone or in Combination with Trastumab in Woman with HER2-Positive Metastatic Breast Cancer

トラスツズマブ治療を行っても進行が止まらなかったHER2陽性転移性乳癌患者に対し,ラパチニブとトラスツズマブの併用治療またはラパチニブ単剤治療を行ったところ,生存期間中央値が併用によって有意に26%延長することが示された(併用群14カ月,単剤群9.5カ月)。米国デューク大学医療センターのKimberly L. Blackwell氏らが報告した。両剤ともにHER2をターゲットとする分子標的薬だが,作用部位が異なるため併用で効果が増幅されたと考えられる。 Kimberly L. Blackwell氏は,「これら2剤によるHER2への標的治療は,‘ワンツーパンチ’のようなもの。ラパチニブ単剤に比べて4カ月以上の大幅な生存期間の改善がもたらされた」と述べた。

“These two targeted therapies against HER2, sort of a ‘one-two punch,’ conveyed a more than four month significant improvement in survival when compared to lapatinib alone,” said Kimberly L. Blackwell.

Key Words
therapies:療法
sort of:~のようなもの
one-two punch:ボクシングの連続パンチ
conveyed:与えた,もたらした
improvement in survival:生存期間の改善

肥満は乳癌患者の予後を悪くする

Effect of Obesity on Prognosis after Early Breast Cancer

デンマークのオーデンス大学病院のMarianne Ewertz氏らは,デンマーク乳癌共同研究グループの1977~2006年の乳癌患者約19,000人分のデータを調べ,肥満によって予後が悪くなることを発見した。BMI(肥満度指数)が25以上の人は25未満の人と比べ,診断時に癌が進行している割合が高かった。また,10年以内に転移するリスクも40%以上高く, 10年以上経ってから乳癌で死亡するリスクは25%以上高くなるという結果だった。 Marianne Ewertz氏は,「全般的に,女性はBMIを25未満に維持する努力をすべきだろう。BMIの高い人には,予防のためにマンモグラフィ検診プログラムに参加するよう強く促さなくてはならない」と述べた。

“Overall, women should make an effort to keep their BMI less than 25,” said Marianne Ewertz.“Those who have a high BMI should be encouraged to participate in mammography screening programs for prevention efforts.”

Key Words
make an effort:努力する
participate:参加する
mammography screening:マンモグラフィ検診
prevention:予防

(関 紗由里)

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