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頸動脈プラーク形成抑制効果:ナイアシンが有意に改善,エゼチミブは効果示せず

Arterial Biology for the Investigation of the Treatment Effects of Reducing Cholesterol 6-HDL and LDL Treatment Strategies(ARBITER 6-HALTS試験)

頸動脈プラーク形成抑制効果:ナイアシンが有意に改善,エゼチミブは効果示せず

 スタチン治療中の心血管病既往患者に対し,ナイアシン(ビタミンB3)の追加投与はエゼチミブよりも頸動脈のプラーク形成抑制効果が高いことが,Late Breaking Clinical Trialのセッションで発表され,大きな反響を呼んだ。

 本試験の結果を発表したのはワシントン・ホスピタルセンターのAllen J.Taylor氏。同氏らは心血管病既往または冠動脈疾患リスクのある患者208名を対象に,スタチンにLDLコレステロール値を低下させるエゼチミブを追加する群とHDLコレステロール値を上昇させるナイアシン徐放薬を追加する群とに分けて検討を行った。本試験では,両剤の予後に対する効果ではなく,サロゲートエンドポイントである頸動脈の内膜中膜厚(プラーク形成の指標)に対する効果が比較された。

 14カ月の追跡の結果,LDLコレステロール値は両群ともに有意に低下したが、低下の程度はエゼチミブ群でより著明だった。一方,HDLコレステロール値はナイアシン群で著明に上昇したが,エゼチミブ群では逆に低下していた。一次エンドポイントの頸動脈内膜中膜厚については,ナイアシン群が投与前と比べ有意に低下したのに対し,エゼチミブ群では変化がみられず,さらにエゼチミブ群ではLDLコレステロール値の低下がプラーク形成の亢進と有意に関連するという,従来の知見とは相反する結果となった。また,主な心血管イベントの発生はナイアシン群がエゼチミブ群より少なかった。なお,本試験はデータ諮問委員会の勧告により早期に中止された。

 今回の結果からTaylor氏は,“Challenge the use of LDL reduction as a guaranteed surrogate for clinical performance, particularly for new clinical compounds, and in this particular case, ezetimibe”と述べ,さらにHDLコレステロール値が低い患者には,スタチン治療でLDLコレステロール値が目標に達したら,ナイアシンのような薬剤を追加投与するのが妥当,との見解を示した。(萩原 充)

■試験の概要

対象   心血管病の既往または冠動脈疾患リスクのあるスタチン治療中の患者208名
 ・30歳以上
 ・3カ月以内のLDLコレステロール<100mg/dL
 ・3カ月以内のHDLコレステロール;男性<50mg/dL,女性<55mg/dL
糖尿病,Framingham risk score≧20%,冠動脈石灰化スコア;男性>400,女性>200のいずれかを有する
     
方法   多施設共同無作為化非盲検試験(PROBE法)
 ・エゼチミブ群(10mg/日):111名
 ・ナイアシン群(2,000mg/日):97名
   ※500mg/日で開始し隔週ごとに500mgずつ2,000mg/日まで増量
     
追跡期間   14カ月
 
結果 ※数値はすべてベースライン時との差
・一次エンドポイント


ナイアシン群 エゼチミブ群 p値

頸動脈内膜中膜厚の変化      
  平均(mm) -0.0142±0.0041 -0.0007±0.0035 0.01
  最大(mm)
-0.0181±0.0050 -0.0009 ±0.0039 0.006

・二次エンドポイント

  ナイアシン群 エゼチミブ群 p値

LDLコレステロール値(mg/dL) -10.0 ±24.5 -17.6±20.1 0.01
HDLコレステロール値(mg/dL) +7.5±9.2 -2.8 ±5.7 <0.001
トリグリセリド(mg/dL) -36 -9 0.001

心血管イベント 2名(1.2%) 9名(5.5%) 0.047

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