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女性ホルモンのリラキシンが急性心不全の症状を著明に改善
Relaxin for the treatment of patients with acute heart failure(Pre-RELAX-AHF試験)
米国では心不全による入院患者はこの10年で25%増加し,今や年間110万人に達するほどとなっている。この心不全に対して,妊娠期の女性ホルモンで血管拡張作用のあるリラキシンが,新たな治療薬として期待されている。今回,カリフォルニア大学のJohn R. Teerlink氏らは,急性心不全患者200名以上を対象に,リラキシンの呼吸困難に対する早期作用および予後改善効果,最適投与量などに関する検討を行い,その結果を報告した。
試験に組み入れられたのは,発症後16時間以内の急性心不全患者(血圧は正常~高血圧)である。フロセミド40mgを静注した後,プラセボ群とリラキシン群(10,30,100,250μg/kg/日の4群)に無作為に分け,各試験薬を2日間投与した。発症から無作為化までの時間の中央値は6.6時間で,全員が安静時に呼吸困難の症状があり,胸部X線上でうっ血が認められていた。
投与後24時間までの呼吸困難に対する早期改善効果はリラキシン30(30μg/kg/日)群で著明であり,この効果は14日後も継続していた。同群では体液量と体重減少も認められたほか,利尿薬投与の回数が減少し,入院中の心不全悪化も抑えられた。「60日後の心不全による再入院または心血管死」は,リラキシン30群でプラセボ群に対し有意ではなかったが80%以上の低下がみられた。特に心血管死は,全投与群のうちリラキシン30群でのみ0件であった。安全性に関しては全投与群で問題はなかった。
これらの結果から,リラキシンは30μg/kg/日の投与量で最も高い効果が得られることが分かった。共同主任研究者であるブレシア大学のMarco Metra 氏は“Relaxin is a promising new therapy for acute heart failure that requires further testing in additional, larger clinical trials”と述べ,リラキシン30μg/kg/日の投与量による第III相試験への期待感を示した。(萩原 充)
■試験の概要
対象 | 急性心不全患者234名 ・発症後16時間以内 ・安静時呼吸困難 ・胸部X線上のうっ血 ・BNP≧350またはNT-pro-BNP≧1,400 pg/mL ・収縮期血圧>125mmHg ・腎機能障害(クレアチニンクリアランス30~75mL/分) |
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方法 | 国際多施設共同・無作為化二重盲検プラセボ対照試験 リラキシン10群(10μg/kg/日):40名 リラキシン30群(30μg/kg/日):42名 リラキシン100群(100μg/kg/日):37名 リラキシン250群(250μg/kg/日):49名 プラセボ群:61名 |
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追跡期間 | 4.5カ月(平均値) | |||||||||||||||||||||||
結果
*Likertスケールによる p値はプラセボ群との比較
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