Hot Topics --- At a Glance
apixabanはアスピリンと比べ心房細動患者の脳卒中リスクを著明に低下
Apixaban associated with “important” relative risk reduction for stroke and systemic embolism in AF(AVERROES試験)
新規の経口血液凝固第Xa因子阻害薬であるapixabanが,心房細動患者の脳卒中リスク抑制効果でアスピリンに勝り,安全性は同等であることが確認された。対象患者は脳卒中危険因子を1つ以上もち,かつワルファリンなどのビタミンK拮抗薬療法不適応のハイリスクな心房細動患者5,600名。これらの患者をapixaban群とアスピリン群に分け,1年間(中央値)追跡したところ,一次エンドポイントの脳卒中+全身性塞栓症の年間発生リスクがapixaban群はアスピリン群と比べ有意に低く(1.6% vs 3.6%,相対リスク0.46,p < 0.001),大出血の年間発生リスクは両群で差がなかった(1.4% vs 1.2%,相対リスク1.14,p = 0.56)。なお,本試験は中間解析の結果を受けて早期に中止された。
心房細動:atrial fibrillation
脳卒中:stroke
全身性塞栓症:systemic embolism
心拍数低下薬のivabradineは頻脈のある心不全患者の予後改善に有効
Effects of ivabradine on cardiovascular events in patients with moderate to severe chronic heart failure and left ventricular systolic dysfunction(SHIFT試験)
純粋な心拍数低下薬であるivabradineが,頻脈のある心不全患者の心血管イベントリスクを有意に抑制することが確認された。左室収縮機能不全のある中等度から重度の慢性心不全で,かつ心拍数70以上の患者6,505名を,ivabradine群とプラセボ群に分け,中央値で22.9カ月追跡した。その結果,一次エンドポイント(心血管死+心不全悪化による入院)はivabradine群がプラセボ群を有意に18%下回った(24.5% vs. 28.7%,ハザード比0.82,p < 0.0001)。心不全などの心血管疾患の患者では,心拍数が高いことが予後の悪さと関連することが知られているが,本試験では,ivabradine群は投与1カ月後からプラセボ群と比べ著明な心拍数低下が得られている(平均心拍数:ベースライン時 両群80,1カ月後 64 vs. 75)。
心拍数低下:heart rate reduction
心血管イベント:cardiovascular event
左室収縮機能不全:left ventricular systolic dysfunction
慢性心不全:chronic heart failure
経口薬rivaroxabanは症候性深部静脈血栓症の再発予防で低分子ヘパリンに劣らない効果
Oral rivaroxaban versus standard therapy in the initial treatment of symptomatic deep vein thrombosis and long-term prevention of recurrent venous thromboembolism(EINSTEIN DVT試験)
経口血液凝固第Xa因子阻害薬のrivaroxabanが,深部静脈血栓症に対し標準治療に劣らない有用性を示すことが分かった。症候性深部静脈血栓症患者3,449名を対象に,標準治療(エノキサパリン+ワルファリンなどのビタミンK拮抗薬)に対するrivaroxabanの非劣性試験を行った。12カ月にわたる治療の結果,有効性の指標である静脈血栓塞栓症の再発はrivaroxaban群2.1%,標準治療群3.0%(ハザード比0.68,p < 0.0001),安全性の指標の大出血または臨床的に重要な非大出血は両群とも8.1%(ハザード比0.97,p = 0.77)となり,rivaroxabanは標準治療に劣らないことが確認された。低分子ヘパリンとビタミンK拮抗薬を用いる標準治療は投与法が煩雑なことから,投与法が簡便な経口抗凝固薬への期待は大きい。
症候性深部静脈血栓症:symptomatic deep vein thrombosis
非劣性試験:non-inferiority study
静脈血栓塞栓症:venous thromboembolism
大出血:major bleeding
第II相試験で待機的PCI患者に対するelinogrelの安全性を確認
Phase 2 safety and tolerability data on elinogrel, a novel antiplatelet agent, in non-urgent PCI(INNOVATE PCI試験)
クロピドグレルに不適応な患者への代替薬として期待される新規P2Y12阻害薬elinogrelの第II相試験から,同剤の安全性が確認された。待機的PCI患者616名を対象に,elinogrelとクロピドグレルを比較したところ,投与24時間後および120日後の安全性(出血リスク)に有意差はなく,有害事象の発現もほぼ同等だった(ただし,呼吸困難とトランスアミナーゼ上昇はelinogrel群の方が高率)。一方,周術期の抗血小板作用は,elinogrelがクロピドグレルを有意に上回った(p < 0.025)。elinogrelは代謝による活性化を必要とせず,経口だけでなく静脈投与も可能で,急性期と慢性期のどちらの使用にも適す薬剤。
待機的PCI:non-urgent PCI,elective PCI
周術期:periprocedural period
抗血小板作用:antiplatelet effect
看護師の患者指導介入が冠動脈疾患患者の予後改善に貢献
Nurses can significantly reduce the risk of recurrent complications in heart patients(RESPONSE試験)
看護師による患者指導の介入が,冠動脈疾患の二次予防に有効であることが示唆された。対象となったのは8週間以内に急性冠症候群を発症した患者754名。このうち半数は,通常のケアに加え,看護師による再発予防プログラム(生活習慣改善,リスク因子管理,服薬指導など)の外来指導が,最初の6カ月間,4回にわたって行われた。もう半数は通常ケアのみとした。その後は両群ともに通常ケアだけを持続し,合計1年間追跡した。一次エンドポイントは,10年後の死亡リスク予測スコアである。1年後,看護師介入群の同スコアは,通常ケア群と比べ,相対リスクで16.9%低下することが分かった(4.5% vs 5.4%,p = 0.029)。現在,心血管疾患の二次予防ガイドラインはESCやAHA/ACCから出されているが,実臨床ではあまり運用されていないという問題がある。看護師による患者指導は,そのギャップを埋める一つの方策になるかもしれない。
二次予防:secondary prevention
急性冠症候群:acute coronary syndrome
外来:outpatient clinic
(関 紗由里)