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Polyvascular diseaseは将来の心血管イベント発生の強力な予測因子
Comparative Determinants of 4-Year Cardiovascular Event Rates in Stable Outpatients at Risk of or with Atherothrombosis: Final Follow-Up from the International REACH Registry(REACHレジストリー)
アテローム血栓症またはそのリスクファクターを複数持つ患者を対象としたREACHレジストリーの追跡データから,心血管イベントリスクに関する新たな解析結果が報告された。演者の米国・ブリンガムアンドウイメンズ病院/ハーバード大学のDeepak L. Bhatt氏は,心血管イベントリスクの予測因子は,ベースライン時の1) polyvascular disease(2つ以上の動脈床に存在するアテローム血栓症),2) 最近の虚血イベントの既往,3) 時期を問わない虚血イベントの既往,4) 糖尿病の順で強力だったことを明らかにした。
本レジストリーに登録されたのは,アテローム血栓症(冠動脈疾患,脳血管疾患,末梢動脈疾患)で症状の安定した外来患者,または3つ以上のアテローム血栓症のリスクファクターをもつ患者68,236名で,日本を含む世界44カ国が参加した。予め規定された心血管の複合エンドポイントは,心血管死,非致死性の脳卒中または心筋梗塞,血管介入術,アテローム性イベントによる入院である。追跡期間は当初2年だったが,その後さらに2年延長された。今回は,その延長を含む4年後の追跡結果が報告された。
すでに1年後の追跡結果は報告1)されており,ベースライン時におけるアテローム血栓症の動脈床(冠動脈,脳,末梢動脈など)の数が心血管イベントリスク上昇の強力な予測因子であり,動脈床2つ以上のpolyvascular diseaseでその上昇が特に顕著であることが示された。
今回の解析には,4年間の追跡データが得られた29カ国,45,227名のすべての患者データが用いられた。ベースライン時の患者背景により4年後の心血管イベント発生率(Kaplan-Meier)を解析したところ,リスクファクターのみの患者が最も低く(16.6%),続いて安定した動脈硬化症(32.8%),虚血イベントの既往(虚血イベント>1年で33.1%,虚血イベント≦1年で36.8%)の順に上昇した。
血管疾患の病態別では,やはり polyvascular diseaseが最も強力な心血管イベントの予測因子であることが分かった(single vascular disease 29.9% vs. polyvascular disease 47.1%)。糖尿病はすべての集団で心血管イベントリスクを上昇させたが,その上昇幅はpolyvascular diseaseや虚血イベント既往でより顕著であった。
Bhatt氏は,今回の解析のなかで興味深かった点として,「リスクファクターのみでアテローム血栓症の既往のない糖尿病患者は,アテローム血栓症の既往のある非糖尿病患者よりも心血管イベントリスクがかなり低かった。これは,糖尿病によるイベントリスク上昇は冠動脈疾患の既往と同程度だとする,よく知られるHaffnerらの報告2)と相反する結果と言える」と述べ,「もちろん,リスクファクターとしての糖尿病の重要性を軽視するものではないが,動脈で実際にアテローム硬化が起こっている人は,心血管イベントの可能性により留意すべきだろう」と結んだ。 (Rick McGuire)
・polyvascular disease
・アテローム血栓症 atherothrombotic disease
・動脈床 vascular bed
・虚血イベント ischemic event
・糖尿病 diabetes
<文献>