Hot Topics --- At a Glance
新規の骨粗鬆症治療薬denosumabが骨転移による骨関連イベントを著明に抑制
A randomized phase III trial of denosumab versus zoledronic acid in patients with bone metastases from castraction-resistant prostate cancer
骨転移のあるホルモン療法難治性の前立腺癌患者約1,900人を対象とした試験で,denosumabが骨関連イベント発生までの期間をゾレドロン酸と比べ有意に延長することが分かった(中央値20.7カ月vs 17.1カ月,p=0.008)。ゾレドロン酸は,すでに骨転移による骨病変予防薬として使用されているビスホスホネート系の薬剤。denosumabは完全ヒト型モノクローナル抗体で,破骨細胞の活性化に関わるサイトカイン・RANKLを標的とする。今年6月にFDAで骨粗鬆症治療薬として承認されたばかり。
ALK融合遺伝子をもつ非小細胞肺癌患者にcrizotinibが高い奏効率を示す
Novel ALK inhibitor shows high response rate in patients with advanced non-small cell lung cancer with specific ALK gene alteration
癌進行の一因となる未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害薬crizotinibが,ALK融合遺伝子をもつ進行非小細胞肺癌患者82人に対し,奏効率57%,病勢安定を含む病勢コントロール率87%という,これまでにない高い有効性を発揮することが示された。非小細胞肺癌患者のうちこの遺伝子をもつ割合は約4%と少ないものの,これまでの治療法では,治療歴のある患者には10%程度しか反応せず(本試験は対象患者の94%が治療歴あり),効果の高い新薬の登場が待たれている。現在,第3相試験が始まっており,その結果に大きな期待が寄せられている。
治療歴のある進行メラノーマ患者の生存期間をipilimumabが改善
Antibody drug ipilimumab improves long-term survival in previously treated advanced melanoma
T細胞の活性化を促進する抗CTLA-4抗体のipilimumabが,進行メラノーマ患者の生存期間を改善することが確認された。試験では,stage III/IVの進行メラノーマ患者676人を対象に,ipilimumab単独,ipilimumab+ペプチドワクチン併用,ペプチドワクチン単独の3群による比較が行われた。その結果,ipilimumab単独およびペプチドワクチンとの併用のいずれも,ペプチドワクチン単独と比べ生存期間を有意に延長した[中央値 10.1カ月 vs. 6.4カ月,p=0.0026(ipilimumab単独),中央値 10.0カ月 vs. 6.4カ月,p=0.0004(併用)]。本試験は,進行メラノーマに対する生存期間の改善が得られた初の第3相試験となった。今後,効果的な併用薬剤の探求やipilimumabの他癌種への応用など,更なる検討が期待される。
センチネルリンパ節転移陽性の早期乳癌患者への腋窩リンパ節郭清は, 生存率改善に寄与せず
Removing axillary lymph nodes based on metastases in the sentinel node does not improve survival in early breast cancer(ACOSOG Z0011試験)
センチネルリンパ節生検が陽性で、腋窩リンパ節への臨床的転移がみられなかった早期乳癌患者891人を対象とした試験から,腋窩リンパ節郭清を行っても行わなくとも5年生存率は変わらないことが示された(郭清群 91.9% vs. 非郭清群 92.5%)。リンパ節郭清による再発率の改善もみられなかった。リンパ節郭清により患者QOLが低下することは広く知られているが,一方で郭清により生存率向上が得られると考えられており,センチネルリンパ節生検で陽性だった患者へのリンパ節郭清はゴールドスタンダードとなっているのが現状。なお,本試験はイベント発生率が低かったことから早期に打ち切られた。
vandetanibが甲状腺髄様癌患者の無増悪生存期間を延長
Vandetanib (VAN) in locally advanced or metastatic medullary thyroid cancer (MTC): A randomized, double-blind phase III trial (ZETA試験)
甲状腺髄様癌患者331人にvandetanib 300mg/日を投与し, 24カ月(中央値)追跡したところ,無増悪生存期間がプラセボ群と比べて有意に延長することが確認された(中央値 未到達 vs. 19.3カ月,ハザード比 0.46,p<0.0001)。vandetanibは,血管内皮細胞増殖因子受容体と上皮成長因子受容体を阻害する分子標的薬。進行性の甲状腺髄様癌の治療薬として第3相試験で効果が認められたのはこれが初めて。
(関 紗由里)