Hot Topics --- At a Glance 〈2〉
バルサルタンもナテグリニドも耐糖能異常患者の心血管イベント抑制に貢献せず
Navigator study raises questions on prevention of diabetes, heart disease (NAVIGATOR試験)
© flickr & UGArdener
心血管リスク因子または心血管病のある耐糖能異常(IGT)患者にアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のバルサルタン,またはインスリン分泌促進薬のナテグリニドを投与しても,プラセボと比べて5年後の心血管イベントリスクを低下しないことが示された。一方,糖尿病の発症は,バルサルタン群はプラセボ群より有意に低下したが(33.1% vs. 36.8%,p<0.001),ナテグリニド群ではむしろ上昇傾向となった(36.0% vs. 33.9%,p=0.05)。解析対象となった患者数は,バルサルタン対プラセボ試験,ナテグリニド対プラセボ試験ともに約9,300人だった。英国オックスフォード大学のRury R. Holman氏らが報告した。
この試験ではライフスタイルの改善プログラムが全患者に実施されていたことから,Holman氏は,「ハイリスク患者では,依然としてライフスタイルの改善が糖尿病を予防する最善の選択だ」とし,「健康的な食生活を送り,定期的に運動し,標準体重を保つことが,糖尿病と血管病のリスクがある患者の長期的な健康のために,極めて重要なことである」と語った。
“Lifestyle modification remains the best choice for preventing diabetes in high-risk patients,” Dr. Holman said. “Eating a healthy diet, exercising regularly, and maintaining a normal body weight are critical for long-term health in patients at risk for diabetes and vascular disease.”
Key Wordsmodification:改善
diabetes:糖尿病
vascular disease:血管病
薬剤溶出ステント後の長期の2剤併用抗血小板療法にアスピリン単剤を凌ぐ効果なし
Extended use of dual antiplatelet therapy not effective (DES-LATE試験)
対象となったのは,薬剤溶出ステントの留置術後に主要な心血管有害イベントや大出血がなく1年以上が経過した患者2,700人。これらの患者をアスピリン単剤群とクロピドグレル+アスピリンの2剤併用群に分けて2年間追跡したところ,主要心血管リスク(心臓死+心筋梗塞)の抑制で両群間に有意差は見られなかった。韓国アサン医療センターのSeung-Jung Park氏らが報告した。
Park氏は,「薬剤溶出ステントを留置した患者に12カ月を超える長期の2剤併用抗血小板療法を行っても,心臓死や心臓発作の発生を抑えるという点でアスピリン単剤療法以上の効果はなかった」と述べた。
“Extended use of dual antiplatelet therapy beyond 12 months among patients who received drug-eluting stents was not significantly more effective than aspirin-only therapy in reducing the rate of cardiac death or heart attack,”said Dr.Seung-Jung Park.
Key WordsExtended:長期間の
dual:2重の(2剤併用)
antiplatelet therapy:抗血小板療法
drug-eluting stents:薬剤溶出ステント
cardiac death:心臓死
heart attack:心臓発作
遺伝子検査がワルファリンの至適用量の判断に役立つ
Genetic testing helps doctors find the best dose for blood thinners (MM-WES試験)
抗凝固薬のワルファリンによる治療の際,医師が患者のワルファリン感受性を遺伝子検査から知ることができると,より的確な処方が可能になり,6カ月後の全原因による入院率が約30%減ることが分かった。本試験には米国49の州から900人の患者が登録された。患者サンプルの遺伝子検査と担当医へのレポート(ワルファリン感受性の程度,投与量の増減やモニタリングの頻度に関する提案など)はメイヨークリニックが担当した。対照(非遺伝子検査群)としたのは過去の試験で同様の患者背景をもつ2,700人のデータだった。米国メドコ・ヘルス・ソリューションズのRobert S. Epstein氏らが報告した。
Epstein氏は,「遺伝子検査は,臨床医がワルファリンの至適投与量を,早い段階でより正確に予測するためのツールになる」とした。
“Genetic testing is a tool clinicians can use to more accurately predict the best warfarin dose early on,” said Robert S. Epstein.
Key Wordsgenetic testing:遺伝子検査
clinicians:臨床医
accurately:正確に
predict:予測する
warfarin:ワルファリン
dose:薬1回分の量
early on:早い段階で
(関 沙由里)