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Hot Topics --- At a Glance 〈1〉

9.11テロ後の現場で働いた警察官に心機能障害が高頻度に発生

Heart problems may be another lingering effect of world trade center collapse

Hot Topics --- At a Glance 〈1〉

© flickr & UGArdener

 2001年に世界中を震撼させたアメリカ同時多発テロ(9.11)。その標的となった世界貿易センタービル(WTC)の崩壊現場(グラウンド・ゼロ)で働いた人の健康被害は,未だに重要な問題のひとつだ。ニューヨークにあるマウントサイナイ医科大学が実施するWTCスクリーニングプログラムでは,粉塵などによる心血管への影響についても調査が行われている。同大学のLori Croft氏らは,9.11直後にグラウンド・ゼロかその近くで働いていた警察官1,200人(平均年齢45歳)の心機能を2008年1月~2009年6月の間に検査したデータから,左心室または右心室の拡張機能不全症が,いずれも60%以上もの人で認められたと報告した。

 Croft氏は,「警察官がWTC崩壊直後に(粉塵の)曝露を受けたことと,心機能との間に因果関係があるかどうかを究明するには,もっと調査が必要だ」と述べた。「この結果には,警察で働く日常のストレスや都市公害に曝されていることも関係しているかもしれない。今回の結果の短期的・長期的な臨床的意義を理解し解明するためには,さらなる研究を要する」

“Additional research is needed to determine if there is a link between early exposure to the World Trade Center collapse and heart function among law enforcement personnel,” Dr. Croft said. “Our findings may also be related to the daily stress of working in law enforcement, as well as exposure to urban pollution. More studies are needed to understand and tease out the clinical significance of short- and long-term consequences of these findings.”

Key Words
exposure to:~に曝されること
law enforcement personnel:警察官
urban pollution:都市公害
tease out:引き出す,解明する
clinical:臨床的な
significance:意義

カテーテルによる僧帽弁修復治療は外科治療と比べ安全面では優る

Catheter repair of leaky mitral valve alternative to surgery (EVEREST II試験)

 僧帽弁閉鎖不全症患者へのカテーテル治療は,外科治療と比べ安全性では大きく優り,有効性では若干劣ることが示された。この試験では,カテーテルを用いてクリップ(MitraClip)で弁を修復する群と外科手術で弁の修復・置換を行う群が比較された。カテーテル治療群の30日後の主要有害イベント発生率は9.6%で,外科手術群の57.0%と比べ大きく下回った。しかし12カ月後の臨床的成功率はカテーテル治療群が72.4%,外科手術群が87.8%で,外科手術群の方が有意に優っていた。米ノースショア大学健康システムのTed Feldman氏らが報告した。

 Feldman氏は,「臨床医として,われわれは強い症状のあった患者がカテーテル治療によって高い心機能を取り戻す様子を見てきた。しかも,この治療では入院や回復のために長い期間は必要ない」と述べた。

“As clinicians, we have seen our patients transformed from highly symptomatic to highly functional with a catheter procedure -- and without a long hospital stay or a long recovery period,” said Ted Feldman.

Key Words
transformed from A to B:AからBへ移行する
symptomatic:症状のある
functional:機能的な
catheter:カテーテル

厳格な降圧を実施しても心血管イベント抑制効果の改善見られず(2型糖尿病患者)

Results mixed for tight blood pressure control in diabetes (ACCORD BP試験)

 高血圧を合併する2型糖尿病患者4,700人を,厳格な降圧を施す群と標準的な降圧を施す群に分け,約5年間治療を行ったところ,厳格な降圧による心血管リスクの有意な改善は脳卒中以外では認められないことが分かった(主要心血管イベント:1.87%/年 vs. 2.09%/年,p=0.2)。両群とも収縮期血圧を120mmHgまで下げることを目標に治療し,4カ月後の収縮期血圧の平均値は厳格降圧群で119mmHg,標準降圧群で134mmHgと,厳格降圧群の方が有意に低下していた。米国とカナダにある77カ所の医療センターの患者が対象。テネシー州メンフィスの退役軍人医療センター・William C. Cushman氏らが報告した。

 Cushman氏は,「われわれがこの研究を始めた頃,血圧を‘正常範囲’に下げることが実際に心血管イベントの減少をもたらすかどうかは明らかでなかった」と述べた。「脳卒中の結果は過去の臨床試験から予想されていた。しかし,われわれが驚いたのは,このような大規模試験で,しかも収縮期血圧でほぼ15mmHgの差が生じていたのに,全体的な心血管へのベネフィットが見られなかったことだ」

“When we started the study, it was not clear whether lowering blood pressure into a "normal range" would, in fact, result in fewer cardiovascular events,” Cushman said.“The stroke results were expected based on previous clinical trials, but we were surprised there was not an overall cardiovascular benefit given the large study size and the nearly 15 mmHg difference in systolic blood pressure.”

Key Words
result in:~をもたらす
cardiovascular:心血管の
stroke:脳卒中
based on:~に基づき
systolic blood pressure:収縮期血圧

スタチンにフェノフィブラートを追加しても心血管イベント抑制効果の改善見られず(2型糖尿病患者)

Fibrates fail to improve cardiovascular outcomes in diabetes (ACCORD Lipid試験)

 2型糖尿病患者で心血管病リスクが高い5,500人を対象に,シンバスタチンにフェノフィブラートを追加する群とプラセボを追加する群に分け,平均4.7年追跡した結果,主要心血管イベントの発生に差のないことが確認された(主要心血管イベント:2.24%/年 vs. 2.41%/年,p=0.32)。ACCORD BP試験同様,米国とカナダにある77カ所の医療センターの患者が対象となった。コロンビア大学のHenry N. Ginsberg氏らが報告した。

 Ginsberg氏は,「全体的に見て,ACCORD Lipid試験の結果は,ハイリスクな2 型糖尿病患者の心血管病を減らすという目的でフェノフィブラートとシンバスタチンの併用療法を行うことは勧められないというものだ」と述べた。

“Overall, the results of the ACCORD Lipid Trial do not support use of combination therapy with fenofibrate and simvastatin to reduce cardiovascular disease in high-risk patients with type 2 diabetes,” Ginsberg said.

Key Words
Lipid:脂質
combination therapy:併用療法
fenofibrate:フェノフィブラート
simvastatin:シンバスタチン
type 2 diabetes:2型糖尿病

(関 沙由里)

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