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再発リスクの高い消化管間質腫瘍患者への術後イマチニブ3年投与は,1年投与と比べ生存期間を有意に延長(SSGXVIII/AIO試験)

Twelve versus 36 months of adjuvant imatinib as treatment of operable GIST with a high risk of recurrence: Final results of a randomized trial

再発リスクの高い消化管間質腫瘍患者への術後イマチニブ3年投与は,1年投与と比べ生存期間を有意に延長(SSGXVIII/AIO試験)

 消化管間質腫瘍患者への術後のイマチニブ1年投与で,無再発生存期間が延長することは既に確認されていたが,今回,ヘルシンキ大学中央病院のHeikki Joensuu氏は,その投与期間を3年にした場合,1年投与と比べ無再発生存期間と全生存期間が有意に延長することを明らかにした。消化管間質腫瘍は術後の再発率が高く,ハイリスク患者の5年再発率は50%以上とされる。消化管間質腫瘍では高頻度でKIT遺伝子やPDGFRα遺伝子に変異がみられるという特徴があるが,分子標的薬のイマチニブは,これらの変異で生じるチロシンキナーゼを特異的に阻害し,腫瘍増殖を抑制する作用がある。

 試験の対象は, KIT遺伝子変異陽性でかつ再発リスクの高い消化管間質腫瘍患者400人。術後補助療法としてイマチニブの1年投与(1年群)と3年投与(3年群)に無作為に割り付け,54カ月(中央値)追跡した。一次エンドポイントは無再発生存期間,二次エンドポイントは全生存期間と安全性とした。

 解析の結果,3年群は1年群と比べ無再発生存期間が有意に延長。5年の無再発生存率は1年群の47.9%に対し,3年群では65.6%と高かった。全生存期間についても3年群で有意な延長がみられ,5年全生存率は1年群の81.7%に対し,3年群では92.0%に上った。

 頻度の高かった有害事象のうち発生率が50%以上だったのは,1年群が貧血,眼窩周囲浮腫,3年群が貧血,眼窩周囲浮腫,LDH(乳酸脱水素酵素)上昇,下痢,悪心・嘔吐であった。グレード3以上の有害事象発生率は1年群20%,3年群33%で,心血管イベントや二次癌の発生率は両群とも5%前後だった。

 Joensuu氏は,イマチニブの投与期間を3年に延ばしたことで,無再発生存期間だけでなく全生存期間も改善したことから,今後,再発リスクの高い消化管間質腫瘍患者への術後補助療法ではイマチニブ3年投与が標準となる可能性があると考察。さらに,今後はイマチニブ長期投与が適する患者タイプを調べる必要があると強調した。現在進行中の試験については,”Studies analyzing GIST risk factors and addressing longer treatment times with adjuvant imatinib – including a single-arm, non-randomized study examining 5-year adjuvant treatment – are currently underway”(GIST:消化管間質腫瘍)と述べた。(渡部桂子・医学ライター)

■試験の概要

対象   再発リスクが高く,KIT遺伝子変異陽性の消化管間質腫瘍患者400人(手術施行患者)
 (解析対象は同意が得られていない患者を除く397人)
・以下の再発リスク因子のいずれかを有する
 腫瘍径>10cm,腫瘍分裂数>10/50 HPF,
 腫瘍サイズ>5cmかつ腫瘍分裂数>5/50 HPF,腫瘍破裂の既往(自然発生または手術時)
     
方法   多施設無作為化オープンラベル比較試験(第III相試験)
・1年間のイマチニブ術後補助療法群(1年群):200人(解析対象199人)
・3年間のイマチニブ術後補助療法群(3年群):200人(解析対象198人)
 ※イマチニブ:400mg/日,経口投与
 ※グレード3以上の非血液毒性が発現した場合や,グレード2の非血液毒性または
  グレード3以上の血液毒性が再発した場合は300mgに減量
     
追跡期間中央値   54カ月
     
結果

  1年群 3年群 ハザード比
(95%信頼区間)
p値

一次エンドポイント
・無再発生存期間     0.46
(0.32~0.65)
<0.0001
  3年無再発生存率 60.1% 86.6%
  5年無再発生存率 47.9% 65.6%

二次エンドポイント
・全生存期間     0.45
(0.22~0.89)
0.019
  3年全生存率 94.0% 96.3%
  5年全生存率 81.7% 92.0%

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