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乳癌の一次予防に第3世代アロマターゼ阻害薬のエキセメスタンが有望

The National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group Mammary Prevention Trial-.3(MAP.3試験)

乳癌の一次予防に第3世代アロマターゼ阻害薬のエキセメスタンが有望

 第3世代のアロマターゼ阻害薬であるエキセメスタンが,閉経後女性の乳癌発症リスクを大幅に低下させることがわかった。エキセメスタンによる浸潤性乳癌の一次予防効果を検討した大規模なプラセボ対照比較試験からの結果である。発表したマサチューセッツ総合病院がんセンターのPaul E. Gross氏によれば,重篤な有害事象の発生はプラセボと変わらなかった。

 対象は,乳癌リスクが高いと判定された35歳以上の閉経後女性4,560人。対象者をエキセメスタン投与とプラセボ投与に無作為に割り付け,長期追跡により,その後の浸潤性乳癌の発症頻度を比較した。

 中央値35カ月の追跡で,浸潤性乳癌が発症したのはプラセボ群が0.55%だったのに対し,エキセメスタン群は0.19%と有意に低く,乳癌発症リスクが65%減少することが確認された。

 一方,何らかの有害事象があった割合は,エキセメスタン群のほうがプラセボ群と比べ有意に高く(88% vs. 85%,p=0.003),特に顔面紅潮でその差が大きかった(40% vs. 32%,p<0.0001)。しかし重篤な事象に限ってみると,アロマターゼ阻害薬で多いとされる骨粗鬆症(1.7% vs. 1.3%)や骨折(6.7% vs. 6.4%)で有意差はみられず,心血管系疾患(4.7% vs. 4.9%)やその他の悪性腫瘍(1.9% vs. 1.7%)でも両群間に有意差は認められなかった。健康関連QOL,閉経期特異的QOLの評価では,肉体的苦痛や性関連でエキセメスタン群のほうが有意に悪かった。

 米国では,すでにエストロゲン受容体陽性乳癌を抑制するタモキシフェンやラロキシフェンが乳癌リスクの高い女性への一次予防薬として承認されている。しかし,血栓塞栓症(タモキシフェン,ラロキシフェン)や子宮内膜癌(タモキシフェン)などの重篤な有害事象の発生リスクが上昇することが報告されており,こういった薬剤による一次予防の実施率は高くないのが実情だ。

 Gross氏は,全世界で毎年130万人が乳癌を発症し,そのうち50万人が死に至るとされる現代において,今回の試験結果は,単にエキセメスタンの乳癌予防効果が示されたことに留まらず,3年程度の追跡ではあったが,同剤の安全性の高さが確認されたことの意義は大きいとし,”Exemestane offers a new option for consideration of breast cancer prevention for menopausal women. Women meeting the inclusion criteria for MAP.3 and their doctors should be made aware of these results” と提言した。(志賀幹太)

■試験の概要

対象   次の条件を1つ以上満たす35歳以上の閉経後女性4,560人
①60歳以上,②Gailの5年リスクスコア>1.66%,③異型乳管過形成,異型小葉過形成,非浸潤性小葉癌のいずれかの既往,④非浸潤性乳管癌による乳腺切除の既往

※次のいずれかに当てはまる場合は除外:BRCA 1/2遺伝子変異を有す,非浸潤性乳癌で
腫瘤摘出術の既往,乳癌の既往,その他の悪性腫瘍の既往
     
方法   多施設共同・無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(第III相試験)
・エキセメスタン(25mg/日)群:2,285人
・プラセボ群:2,275人
     
追跡期間(中央値)   35カ月
     
結果
<一次エンドポイント&二次エンドポイント>

  エキセメスタン群
発生率(n)
プラセボ群
発生率(n)
ハザード比
(95%信頼区間)
p値

一次エンドポイント
・浸潤性乳癌 0.19%(11) 0.55%(32) 0.35
(0.18~0.70)
0.002

二次エンドポイント
・浸潤性乳癌+
非浸潤性乳管癌
0.35%(20) 0.77%(44) 0.47
(0.27~0.79)
0.004
・非浸潤性乳管癌 0.16%(9) 0.24%(14) 0.65
(0.28~1.51)
0.31
・異型乳管過形成+
異型小葉過形成+
非浸潤性小葉癌
0.07%(4) 0.20%(11) 0.36
(0.11~1.12)
0.08

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