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新規の抗CTLA抗体を追加した一次治療が,転移性メラノーマ患者の生存期間延長に有効

Phase III randomized study of ipilimumab (IPI) plus dacarbazine (DTIC) versus DTIC alone as first-line treatment in patients with unresectable stage III or IV melanoma.

新規の抗CTLA抗体を追加した一次治療が,転移性メラノーマ患者の生存期間延長に有効

 世界的にみて,この30年で急速に発症率が上昇している転移性メラノーマは,予後が極めて悪く,治療開始からの1年生存率は25%,2年生存率は10%程度とされる。より効果の高い治療法の開発が強く望まれているが,そのような中,ニューヨークのスローン・ケタリング記念がんセンターのJedd D. Wolchok氏らは,標準的一次化学療法に新規の抗CTLA抗体を追加する治療法が,転移性メラノーマ患者の全生存期間を有意に延長することを確認。本学会で発表した。

 細胞傷害性Tリンパ球抗原(CTLA)-4に対する完全ヒト化モノクローナル抗体のipilimumabは,CTLA-4に結合し,そのT細胞活性化抑制作用を阻害。T細胞の働きを増強させ,T細胞媒介性の抗腫瘍免疫反応を亢進してメラノーマ細胞を破壊する。治療歴のある転移性メラノーマ患者を対象とした第III相試験では,この新規薬剤ipilimumabの単剤治療が,ペプチドワクチンgp100と比べて全生存期間を延長することが示されている。今回の試験では,治療歴のない患者に対し,標準的化学療法のダカルバジンにipilimumabを追加することで,生命予後の改善が得られるかどうかが検討された。

 対象は未治療の転移性メラノーマ患者502人。これらの患者をダカルバジンにipilimumabを併用する群(ipilimumab群)と,プラセボを併用する群(プラセボ群)とに無作為に割り付けた。

 解析の結果,一次エンドポイントの全生存期間中央値は,プラセボ群の9.1カ月に対し,ipilimumab群では11.2カ月と有意に延長した(p=0.0009)。一方,二次エンドポイントの無増悪生存期間中央値はipilimumab群2.8カ月,プラセボ群2.6カ月で,有意差(p=0.006)はあるものの,両群間の差は大きいものではなかった。これについてWolchok氏は,ipilimumabのような免疫療法は,従来の化学療法や標的療法と比べ,効果発現までに時間を要することを理由として挙げた。

 有害事象発生率は全体では両群間に差はなかったが(ipilimumab群 vs. プラセボ群: 98.8% vs. 94.0%),グレード3以上の有害事象はipilimumab群のほうが多く(56.3% vs. 27.5%),治療関連死はプラセボ群の胃腸出血1人のみだった。一方,ipilimumab群で多かった有害事象は,第II相試験同様,そう痒や発疹などの皮膚関連,下痢や大腸炎などの消化器系で,大部分が軽症だった。また,肝機能障害の指標であるALT,ASTの上昇がみられたのは,ダカルバジン群でどちらも6%程度だったのに対し,ipilimumab群では約30%と高く,そのうち約20%がグレード3以上であった。

 Wolchok氏は,本試験により転移性メラノーマに対する化学療法と免疫療法の併用療法の有用性が初めて確認されたとし,“The next step in the research is to investigate combinations of different therapies with ipilimumab, such as the targeted drug vemurafenib in melanoma patients with BRAF mutations, and to test other combinations of targeted agents and immune-modifying agents together as well” と結んだ。(志賀幹太)

■試験の概要

対象   未治療の転移性メラノーマ患者502人
・切除不能なステージIIIC,N3,IV
・全身症状(ECOG PS:パフォーマンス・ステイタス)0~1
     
方法   国際多施設共同・無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(第III相試験)
・ipilimumab群:250人(ipilimumab 10mg/kg+ダカルバジン850mg/m2
・プラセボ群:252人(プラセボ+ダカルバジン850mg/m2
 ※治療は,ダカルバジン+ipilimumab,またはプラセボを3週毎1回4サイクルまで投与。
  病勢が安定し用量制限毒性が認められない場合,ダカルバジンのみ3週毎1回4サイクルまで
  追加投与可能。
 ※ダカルバジン投与終了後の維持療法は,ipilimumabまたはプラセボを12週毎1回投与。
     
結果
<治療内容>

  ipilimumab群 プラセボ群

投与サイクル数(中央値) 3.0 4.0
4サイクル施行患者 37.2% 66.0%
維持療法施行患者 17.4% 21.1%


<一次エンドポイント&二次エンドポイント>

  ipilimumab群 プラセボ群 ハザード比
(95%信頼区間)
p値

一次エンドポイント
・全生存期間(中央値) 11.2カ月 9.1カ月 0.72
(0.59~0.87)
0.0009

二次エンドポイント
・無増悪生存期間(中央値) 2.8カ月 2.6カ月 0.76
(0.63~0.93)
0.006
・病勢コントロール率 83人(33.2%) 76人(30.2%)
・奏効率 38人(15.2%) 26人(10.3%)
  完全寛解 4人(1.6%) 2人(0.8%)
  部分寛解 34人(13.6%) 24人(9.5%)
・奏効期間 19.3カ月 8.1カ月
・推定1年生存率 47.3% 36.3%
・推定2年生存率 28.5% 17.9%
・推定3年生存率 20.8% 12.2%

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