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非小細胞肺癌に対する血管破壊剤vadimezan(ASA404)の追加治療でベネフィットは得られず
Antivascular Targeted Therapy: Researching ASA404 in Cancer Treatment(ATTRACT-1試験)
進行非小細胞肺癌に対する血管破壊剤vadimezanの有効性を検討していた第III相試験で,中間解析の結果,従来の一次化学療法に本剤を追加しても生存期間の延長は得られないことが明らかとなった。試験は早期中止となったが,本学会では,その解析結果がカリフォルニア大学デービスがんセンターのPrimo N. Lara氏から報告された。
対象は化学療法の治療歴がない進行非小細胞肺癌患者1,299人。これらの患者を無作為に,カルボプラチン/パクリタキセル+vadimezan(vadimezan群)と,カルボプラチン/パクリタキセル+プラセボ(プラセボ群)に割り付け,全生存期間,無増悪生存期間,奏効率,および安全性を評価した。
中間解析の結果,一次エンドポイントの全生存期間(中央値)は両群で差がなく(vadimezan群13.4カ月,プラセボ群12.7カ月,p=0.535),二次エンドポイントの無増悪生存期間や奏効率も同様の結果となった。
一方,有害事象も両群間で差はなく,グレード3以上の発現があったのは,好中球減少(vadimezan群 vs. プラセボ群:51.7% vs. 42.7%),呼吸困難(5.9% vs. 4.8%),貧血(5.4%,4.8%)などだった。懸念された喀血,血管毒性,心毒性といった有害事象もvadimezan群で増加はみられず,治療薬に起因する治療関連死はvadimezan群で1人,プラセボ群で2人だった。
vadimezanは,腫瘍血管の内皮細胞に直接作用してアポトーシスを引き起こし,さらにvon Willebrand因子を増加させて腫瘍血管内の血栓形成を誘導し血管閉塞を起こすなど,直接的・間接的に腫瘍血管の破壊や腫瘍壊死を促す。非小細胞肺癌などの固形腫瘍に有効性があるとされ,実際,第II相試験では全生存期間,無増悪生存期間の有意な延長と,高い奏効率が示されていた。
Lara氏は,第II相試験で得られた良好な成績が今回の第III相試験で覆された理由について,まず第II相試験での問題点として,対象患者数が少なかったために効果が過大評価された可能性や,プラセボ対照でも盲検試験でもなかったためバイアスがかかったとの見方を示した。さらに,今回の第III相試験では,プラセボ群でも生存期間中央値が12.7カ月と長く,試験開始時の想定を上回ったことも要因のひとつとした。今後の血管破壊剤の臨床試験の課題として,Lara氏は,”Patients with high likelihood of benefiting from vascular disrupting agents, as identified by a putative biomarker, should be the focus of any future study”と締めくくった。(越山みどり)
■試験の概要
対象 | 化学療法の治療歴のない進行非小細胞肺癌患者1,299人 |
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方法 | 国際共同プラセボ対照無作為化比較試験(第III相試験) ・vadimezan群:649人(カルボプラチン/パクリタキセル+vadimezan) ・プラセボ群:650人(カルボプラチン/パクリタキセル+プラセボ) ※治療は以下を3週毎1日目に静注投与,最大6サイクルまで施行 ・カルボプラチン AUC 6 ・パクリタキセル200mg/m2 ・vadimezan 1,800 mg/m2またはプラセボ ※最大6サイクルが終了後,vadimezanは維持療法を増悪まで継続 |
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結果 ※サイクル数(中央値)は,vadimezan群5,プラセボ群5 その後の維持療法のサイクル数(中央値)は,vadimezan群3,プラセボ群4
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