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新規のBRAFキナーゼ阻害剤が転移性メラノーマ患者の生存期間を有意に延長

Phase III randomized, open-label, multicenter trial (BRIM3) comparing BRAF inhibitor vemurafenib with dacarbazine (DTIC) in patients with V600EBRAF-mutated melanoma(BRIM3試験)

新規のBRAFキナーゼ阻害剤が転移性メラノーマ患者の生存期間を有意に延長

 新規の経口BRAFキナーゼ阻害剤であるvemurafenibが,進行性メラノーマ患者の生存期間を有意に延長することが分かった。転移性メラノーマに対するvemurafenibの有効性を検討した第Ⅲ相試験の中間解析の結果から,ニューヨークのスローン・ ケンタリング記念がんセンター・Paul Chapman氏が明らかにした。

 BRAF遺伝子は細胞増殖や細胞内のシグナル伝達に関与するBRAF蛋白を作っているが,メラノーマ患者の約半数でこの遺伝子にV600E変異がみられ,その変異遺伝子が作るBRAF蛋白により,がん細胞の増殖は促進されると考えられる。vemurafenibは,この変異BRAF蛋白を選択的に阻害する。

 本試験の対象となったのは,未治療のBRAF 遺伝子V600E変異を持つ進行性メラノーマ患者675人。これらの患者を無作為にvemurafenib群(960mg 1日2回経口投与)と標準治療であるダカルバジン群(1,000mg/m2静注を3週毎)に割り付けた。一次エンドポイントは全生存期間と無増悪生存期間とした。

 今回発表された中間解析の結果では,全生存期間と無増悪生存期間の改善を示すハザード比はそれぞれ0.37(p<0.0001)と0.26(p<0.0001)となり,いずれもvemurafenib群がダカルバジン群と比べ有意に延長することが確認された。また,推定される6カ月生存率はvemurafenib群が84%,ダカルバジン群は64%だった。一方,奏効率はvemurafenib群が48.4%だったのに対し,ダカルバジン群は5.5%に留まった。

 毒性に関しては,グレード3以上の有害事象で多かったのは,vemurafenib群が皮膚扁平上皮がん12%,発疹8%,肝機能検査値上昇7%,角化棘細胞腫6%で,ダカルバジン群が好中球減少8%であった。両群とも有害事象により治療中止にまで至ったケースは少なかった(6% vs. 4%)。

 中間解析の結果とはいえ,メラノーマ治療の臨床試験で,試験薬が標準治療に比べて全生存期間や無増悪生存期間,奏効率を上回ったのは初めてのことである。Chapman氏は ”Because the study findings showed improvements in progression-free survival (PFS) and response rate along with greater overall survival, PFS may now become a validated study endpoint for future trials with similarly targeted therapies in melanoma”と述べた。(志賀幹太)

■試験の概要

対象   治療歴のない切除不能なステージIIICまたはIVのBRAF遺伝子 V600E変異を有するメラノーマ患者675人
     
方法   国際多施設共同・無作為化オープンラベル比較試験(第III相試験)
・vemurafenib群:337人(960mg 1日2回経口投与)
・ダカルバジン群:338人(1,000mg/m2 3週毎静注)
     
結果(中間解析)

  vemurafenib群 ダカルバジン群 ハザード比
(95%信頼区間)
p値

一次エンドポイント

       
・全生存期間     0.37
(0.26~0.55)
<0.0001
  推定6カ月生存率 84% 64%    
・無増悪生存期間(中央値) 5.3カ月 1.6カ月 0.26
(0.20~0.33)
<0.0001

二次エンドポイント        
・奏功率 48.4% 5.5%    
  完全奏効 0.9% 0    
  部分奏効 47.5% 5.5%    

※全生存期間と無増悪生存期間の解析対象数は,vemurafenib群がそれぞれn=336,n=275,ダカルバジン群がn=336,n=274であった。

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