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FOLFIRIとセツキシマブの併用はベバシズマブ併用に比べKRAS野生型切除不能進行再発大腸がん患者の生存期間を有意に延長(FIRE-3試験)
Randomized Comparison of FOLFIRI Plus Cetuximab Versus FOLFIRI Plus Bevacizumab as First-Line Treatment of KRAS Wild-Type Metastatic Colorectal Cancer: German AIO Study KRK-0306 (FIRE-3)
FOLFIRI(フルオロウラシル,ロイコボリン,イリノテカンを併用する化学療法)は,抗EGFR(上皮増殖因子受容体)抗体セツキシマブまたは抗VEGF(血管内皮増殖因子)抗体ベバシズマブと併用することで,切除不能進行再発大腸がんの治療に高い効果を上げることが知られている。セツキシマブは,腫瘍の増殖シグナルを抑制する分子標的薬。一方のベバシズマブは,腫瘍の血管新生を阻害する分子標的薬だ。いずれも,化学療法との併用が承認されている。
FIRE-3は,KRAS野生型切除不能進行再発大腸がんの一次治療として,FOLFIRI併用下でのセツキシマブとベバシズマブを直接比較した初めての試験。この試験の結果から, FOLFIRIとセツキシマブの併用で生存期間が有意に延長することが分かった。ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのSebastian Stintzing氏が報告した。
対象患者592人は,FOLFIRI+セツキシマブ群とFOLFIRI+ベバシズマブ群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。追跡期間の中央値はFOLFIRI+セツキシマブ群が33.0カ月,FOLFIRI+ベバシズマブ群が39.0カ月で,両群に有意差はなかった。
一次評価項目の奏効率は,FOLFIRI+セツキシマブ群で62.0%,FOLFIRI+ベバシズマブ群で58.0%(p=0.183)で,有意差はなかった。ただし奏効評価可能集団(3サイクル以上の治療を終え,かつベースライン後にCTスキャンを行った患者)では,奏効率がFOLFIRI+セツキシマブ群72.2%,FOLFIRI+ベバシズマブ群63.1%と,FOLFIRI+セツキシマブ群で有意に良好だった(p=0.017)。二次評価項目の無増悪生存期間は,両群に有意差はなく,ほぼ同等だった。同じく二次評価項目の生存期間は,FOLFIRI+セツキシマブ群が中央値28.7カ月,FOLFIRI+ベバシズマブ群が中央値25.0カ月で,FOLFIRI+セツキシマブ群で有意に延長した(p=0.017)。
治験責任医師であるルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのVolker Heinemann氏は,今回の結果について “This degree of survival benefit was equivalent to the survival benefit seen in clinical trials that led to the approval of cetuximab and bevacizumab in this setting” と評価した。(神尾希)
■試験の概要
対象
KRAS野生型切除不能進行再発大腸がん患者592人
・18歳以上
・全身状態(ECOG PS:パフォーマンスステイタス)0~2
・術後補助化学療法の既往がある場合,試験組み入れの6カ月より以前に治療を終えた者
※全患者のうち3サイクル以上の治療を終え,かつベースライン後にCTスキャンを行った患者を奏効評価可能集団とした。
方法
多施設共同無作為化比較試験
・FOLFIRI+セツキシマブ群:297人(奏効評価可能集団:255人)
[FOLFIRI*に加え,セツキシマブを静注
(初回は400mg/m2を120分かけて静注,以降は1週間ごとに250mg/m2を60分かけて静注)]
・FOLFIRI+ベバシズマブ群:295人(奏効評価可能集団:271人)
(FOLFIRI*に加え,ベバシズマブ5mg/kgを2週間ごとに30~90分かけて静注)
*FOLFIRIレジメン:
・フルオロウラシル 400mg/m2を急速静注
・ロイコボリン400mg/m2を静注
・イリノテカン180mg/m2を静注
・フルオロウラシル 2,400mg/m2を46時間持続静注
追跡期間(中央値)
FOLFIRI+セツキシマブ群:33.0カ月
FOLFIRI+ベバシズマブ群:39.0カ月
※両群に有意差なし
結果
※治療サイクル数(中央値)は,FOLFIRI+セツキシマブ群が10,FOLFIRI+ベバシズマブ群が12(p=0.014)
<一次評価項目>
●ITT解析
FOLFIRI + セツキシマブ群 (%) |
FOLFIRI + ベバシズマブ群 (%) |
オッズ比 (95%信頼区間) |
p値 | |
奏効率 | 62.0 | 58.0 | 1.18 (0.85~1.64) |
0.183 |
●奏効評価可能集団に対する解析
FOLFIRI + セツキシマブ群 (%) |
FOLFIRI + ベバシズマブ群 (%) |
オッズ比 (95%信頼区間) |
p値 | |
奏効率 | 72.2 | 63.1 | 1.52 (1.05~2.19) |
0.017 |
<二次評価項目>
FOLFIRI + セツキシマブ群 (月) |
FOLFIRI + ベバシズマブ群 (月) |
ハザード比 (95%信頼区間) |
p値 | |
無増悪生存期間 (中央値) |
10.0 | 10.3 | 1.06 (0.88~1.26) |
0.547 |
生存期間 (中央値) |
28.7 | 25.0 | 0.77 (0.62~0.96) |
0.017 |
<安全性>
※両群で有意差があったもののみ
FOLFIRI + セツキシマブ群 (%) |
FOLFIRI + ベバシズマブ群 (%) |
p値 | ||
<非血液毒性> | ||||
悪心 | 48.2 | 62.4 | 0.0005 | |
嘔吐 | 24.6 | 32.9 | 0.03 | |
手足症候群 (グレード3以上) |
26.6 3.4 |
14.2 0.7 |
0.0002 0.037 |
|
致死的な有害事象 | 0.0 | 1.7 | 0.030 | |
<セツキシマブ関連の有害事象> |
||||
ざ瘡様皮疹 (グレード3以上) |
77.4 16.8 |
7.8 0.0 |
<0.0001 <0.0001 |
|
落屑 (グレード3以上) |
35.4 6.7 |
11.5 0.7 |
<0.0001 0.0001 |
|
爪囲炎 (グレード3以上) |
37.4 5.7 |
9.2 0.0 |
<0.0001 <0.0001 |
|
インフュージョン関連の |
7.7 4.0 |
0.0 0.0 |
<0.0001 0.0004 |
|
低カルシウム血症 | 27.6 | 15.3 | 0.0003 | |
低マグネシウム血症 ・グレード3以上 |
63.3 4.4 |
39.7 0.7 |
<0.0001 0.007 |
|
<ベバシズマブ関連の有害事象> |
||||
高血圧 | 21.2 | 38.3 | <0.001 | |
出血 | 21.2 | 28.5 | 0.046 | |
膿瘍/消化管瘻 | 1.4 | 5.4 | 0.006 | |