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ソラフェニブの投与で放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん患者の無増悪生存期間が有意に延長(DECISION試験)

Sorafenib in Locally Advanced or Metastatic Patients with Radioactive Iodine-Refractory Differentiated Thyroid Cancer: The Phase 3 DECISION Trial

ソラフェニブの投与で放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん患者の無増悪生存期間が有意に延長(DECISION試験)

 分化型甲状腺がんは甲状腺がんに最もよく見られる組織型で,甲状腺切除術や放射性ヨウ素治療といった標準治療による治癒率が高い。しかし分化型甲状腺がん患者の5~15%は放射性ヨウ素治療に抵抗性を示し,このような患者では標準治療が確立されていないのが現状だ。そのような中,マルチキナーゼ阻害剤ソラフェニブが放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん患者の無増悪生存期間を有意に延長させることが分かった。米国・ペンシルベニア大学アブラムソンがんセンターのMarcia. S. Brose氏が明らかにした。

 第III相試験となる本試験では,放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんに対するソラフェニブの有効性と安全性がプラセボと比較された。対象となったのは局所進行または転移性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん患者417人。ソラフェニブ400mgを1日2回経口投与する群(ソラフェニブ群)とプラセボを1日2回経口投与する群(プラセボ群)に無作為に割り付けた。プラセボ群の患者で進行がみられた場合は,医師の判断によりソラフェニブを投与するクロスオーバーができるものとした。一次エンドポイントは無増悪生存期間,二次エンドポイントには全生存期間,奏効率,安全性が含まれていた。

 無増悪生存期間は,ソラフェニブ群(207人)で中央値が10.8カ月,プラセボ群(210人)で中央値が5.8カ月だった(p<0.0001)。全生存期間は両群とも中央値に達していなかった。両群で完全奏効はみられず,部分奏効はソラフェニブ群で24人,プラセボ群で1人にみられ,奏効率はそれぞれ12.2%と0.5%だった(p<0.0001)。ソラフェニブ群で発生した治療に起因する有害事象は,手足の皮膚反応,下痢,脱毛,皮疹/落屑,疲労,体重減少,高血圧などであった。

 Brose氏は "After having no effective drugs for these patients for so many years, it is very exciting to find an oral drug that stops growth of the cancer for several months" とコメントし,本試験での知見に対する期待感を表した。(中川ゆり子)


■試験の概要

対象
局所進行性または転移性の放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん患者417人
   ・無作為化までの14カ月間に RECIST 基準による病勢進行あり
   ・化学療法,分子標的薬,サリドマイドによる治療歴なし

方法
二重盲検多施設無作為化比較試験
   ・ソラフェニブ群:207人(ソラフェニブ400mg を1日2回経口投与)
   ・プラセボ群:210人(プラセボを1日2回経口投与)
※8週間ごとに病勢進行を評価した。
※プラセボ群で病勢進行がみられた場合,オープンラベルでソラフェニブ群を投与するクロスオーバーができるものとした。

結果
<一次エンドポイント>


   ソラフェニブ群   プラセボ群  ハザード比
(95%信頼区間)
    p値   

 無増悪生存期間(中央値) 10.8カ月 5.8カ月  0.587
(0.454~0.758)
 <0.0001


<二次エンドポイント>


   ソラフェニブ群*    プラセボ群**  p値

 全生存期間中央値

未達 未達  --
 奏効率
 ・完全奏効 n(%)
 ・部分奏効 n(%)
24(12.2)
0(0)
24(12.2)
1(0.5)
0(0)
1(0.5)
<0.0001
--
--
 6カ月以上の安定 n(%) 82(41.8) 67(33.2) --
 病勢コントロール率*** n(%) 106(54.1) 68(33.8) <0.0001
 奏効期間中央値(月) 10.2 -- --

*ソラフェニブ群 n=196
**プラセボ群 n=201
***6カ月以上の完全奏効+部分奏効+安定


<安全性>


   ソラフェニブ群*  (%)  プラセボ群**(%)
  全グレード*** グレード3/4 全グレード グレード3/4

 ・手足の皮膚反応 76.3 20.3 9.6 0
 ・下痢 68.6 5.8 15.3 1.0
 ・脱毛 67.1 0 7.7 0
 ・皮疹/落屑 50.2 4.8 11.5 0
 ・疲労 49.8 5.8 25.4 1.4
 ・体重減少 46.9 5.8 13.9 1.0
 ・高血圧 40.6 9.7 12.4 2.4
 ・代謝/臨床検査値 35.7 0 16.7 0
 ・食欲不振 31.9 2.4 4.8 0
 ・口腔粘膜炎 23.2 1.0 3.3 0
 ・掻痒症 21.3 1.0 10.5 0
 ・悪心 20.8 0 11.5 0
 ・低カルシウム血症 18.8 9.2 4.8 1.4

*ソラフェニブ群 n=207
**プラセボ群 n=209
***CTCAE(有害事象共通用語基準)Ver3.0 によるグレード。グレード3/4は高度/生命を脅かすまたは活動不能とする有害事象。

※重篤な有害事象はソラフェニブ群で77人(37.2%),プラセボ群で55人(26.3%)に発生し,二次性悪性腫瘍,皮膚有棘細胞がん,呼吸困難,胸水が多くみられた。薬剤に起因する死亡は各群で1例ずつみられた。

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