気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!

2013年5月まで配信していたメールマガジン『気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!』の全バックナンバーを公開します。

主要医学ジャーナル4誌(N Engl J Med,JAMA,BMJ,Lancet)に掲載された100論文の全単語から,英文の“核”とも言える動詞だけを集めて使用頻度を解析。このうちランキング上位の動詞を,ランダムに取り上げています。

バイリンガルの富田氏が語る「単語の持っているイメージ,ネイティブが感じるニュアンス」は,まさに“目からウロコ”の感涙もの!
1つの動詞を3つの違った角度から学習できるので,その使い方が徐々に脳に染み込みます。

月~金曜にわたり,毎日1単語ずつ,全100単語分のバックナンバーを順次公開していきます。お楽しみに!!

No. 72

mediate

意味:媒介する

単語のイメージ:何かの間に存在して作用する

論文での使われ方をチェック!▼

例文

(1)ADCC refers to as antibody-dependent immune reaction or cytotoxicity mediated by cells.
(2)Risk for age-related macular degeneration is mediated by both environmental and genetic factors.

単語チェック

  • ADCC antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity の略語。抗体依存性細胞傷害
  • immune reaction 免疫反応
  • cytotoxicity 細胞毒性
  • cells 細胞
  • age-related macular degeneration 加齢性黄斑変性(AMD)
  • environmental 環境的な
  • genetic 遺伝的な
  • factors 因子

対訳

(1)ADCC とは,細胞によって媒介される抗体依存性の免疫反応や細胞毒性のことをいう。
(2)加齢性黄斑変性のリスクは,環境的および遺伝的因子の両方によってもたらされる。

ミニ解説

読んで字の如く,この単語は med,即ち middle(真ん中)を意味するので,「媒介する」「橋渡しをする」ことを表します。これと同じ意味で,形容詞あるいは名詞として使われるのが intermediate(仲介者;中間にある)です。少し回りくどい言い方になりますが,ある intermediate agent(仲介物質)が mediate(媒介)して何かに作用するという関係です。
これを踏まえると,(1)の例文は以下のようにアレンジすることができます。

《例文》
ADCC occurs when a cell acts as an intermediate agent to start an immune reaction dependent on antibody.
(ADCC は,細胞が抗体依存性の免疫反応を起こす仲介物質として作用するときに起こる)

a cell acts as an intermediate agent to start an immune reaction は cell mediates an immune reaction と同じことです。英語はできるだけシンプルな文章が好まれますから intermediate を使わなければ説明できないときには intermediate を,動詞の mediate だけで事が足りるときには mediate を使うようにするのがよいでしょう。

英作文に挑戦!▼

問題

(1)インテグロンは多剤耐性を媒介する遺伝子の単位である。
(2)ナイアシンは炭水化物,脂質,タンパク質の代謝を媒介する。

ヒント

  • インテグロン integron
  • 多剤耐性 multidrug resistance
  • 遺伝子の単位 genetic unit
  • ナイアシン niacin(水溶性ビタミンの一種で,ビタミンB3とも呼ばれる)
  • 炭水化物 carbohydrate
  • 脂質 lipid
  • タンパク質 protein
  • 代謝 metabolism

解答例

(1)Integron is a genetic unit mediating multidrug resistance.
(2)Niacin mediates the metabolism of carbohydrate, lipid and protein.

ミニ解説

(1)の解答例では,mediate が現在分詞として使われています。英語では,現在分詞を使いこなすコツがつかめるようになると,文章を組み立てるのがかなり楽になります。そして,動詞を使いこなすにあたって,この現在分詞が実に便利な形なのです。
以下は(1)を現在分詞ではなく,関係代名詞を使って書き換えた文章です。

《例文》
Integron is a genetic unit that mediates multidrug resistance.

これよりも現在分詞を使ったほうがすっきりしていますね。実際,多くのネイティブは,関係代名詞はまどろっこしいものと考えています。論文をネイティブにチェックしてもらうと,関係代名詞がことごとく現在分詞や過去分詞に修正されて戻ってくる,という経験をした方も多いのではないでしょうか。関係代名詞の that や which がたくさん使われていると,句読点が多くなり,ネイティブでさえ頭が混乱してくるのです。それに対し,日本人はどちらかというと関係代名詞を使った文章の組み立て方を好む傾向にあります。
論文のなかで関係代名詞を使いすぎていると感じたら,動詞を現在分詞や過去分詞など別の形に書き換えられないか考えてみましょう。

会話での使われ方をチェック!▼

例文

(Q)What is the mechanism of diuretic action of agent A?
(A)It may mediate epithelial Na channel inhibition in the proximal renal tubules.

単語チェック

  • mechanism メカニズム
  • diuretic action 利尿作用
  • agent 薬剤
  • epithelial Na channel 上皮性ナトリウムチャネル
  • inhibition 阻害
  • proximal renal tubules 近位尿細管

対訳

(Q)A薬の利尿作用のメカニズムはどのようなものですか。
(A)近位尿細管での上皮性ナトリウムチャネル阻害を媒介していると考えられます。

ミニ解説

今回の(Q)には,以下のように We can say を使って答えることもできます。

《例文》
We can say that it mediates epithelial Na channel inhibition in the proximal renal tubules.

ただ,We can say を使うときには,気をつけなくてはいけないことがあります。それというのも,この言い回しは,「そう言ってもいいんだけど・・・」(不確定)から,「~と言える」(確信)まで,確信の度合いにかなりの幅があるからです。つまり,同じ We can say でも声の出し方やトーン,顔の表情によって確信の度合いに差を出すことができるのです。このように幅広い用途があるものは,話し方を誤ると,意図したことと違う意味で伝わってしまうことがあるので注意が必要です。「~していると考えられる」というニュアンスを誤解なく伝えたいときは,今回の(A)のように It may ~ という言う方が無難でしょう。
この例に限らず,英語で話すときは,何気ない言葉ほど感情を込めて言うように心がけたいものです。一般に日本人は,欧米人のように感情を表に出して話すことがあまりないので,たまにテレビや映画などで感情の込め方を研究してみるのもよいかもしれませんね。

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