2013年5月まで配信していたメールマガジン『気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!』の全バックナンバーを公開します。
主要医学ジャーナル4誌(N Engl J Med,JAMA,BMJ,Lancet)に掲載された100論文の全単語から,英文の“核”とも言える動詞だけを集めて使用頻度を解析。このうちランキング上位の動詞を,ランダムに取り上げています。
バイリンガルの富田氏が語る「単語の持っているイメージ,ネイティブが感じるニュアンス」は,まさに“目からウロコ”の感涙もの!
1つの動詞を3つの違った角度から学習できるので,その使い方が徐々に脳に染み込みます。
月~金曜にわたり,毎日1単語ずつ,全100単語分のバックナンバーを順次公開していきます。お楽しみに!!
No. 71
describe
意味:記述する,言い表す
単語のイメージ:頭でイメージできるものを,他の人と共有できるように言葉で言い表す
例文
(1)As described in the guidelines, EGFR and K-ras mutations are mutually exclusive in patients with lung cancer.
(2)The previous report described the pathological findings on 30 patients who experienced acute anterior poliomyelitis.
単語チェック
- guidelines ガイドライン
- EGFR epidermal growth factor receptor の略語。上皮成長因子受容体(細胞の増殖にかかわるシグナルを伝達する役目がある)
- K-ras ras遺伝子の一種
- mutations 変異
- mutually 相互に
- exclusive 排他的な
- lung cancer 肺がん
- pathological 病理学的な
- findings 結果,所見
- acute anterior poliomyelitis 急性灰白髄炎
対訳
(1)ガイドラインにも記載されているように,肺がん患者ではEGFRとK-ras変異は相互排他的である。
(2)前回の報告では,急性灰白髄炎を経験した30名の患者に関する病理学的結果を示した。
ミニ解説
describe は,目で見たものや頭の中のアイデアなどを,なるべく詳しく言葉で再現するときに使う単語です。
たとえば(1)でみると,ガイドラインは通常,治療のステップなどが項目化され,こういう場合にはこうすべきである,などの詳しい指示が書かれています。そのため,ガイドラインを読む人は個々の項目から全体像を把握することができます。このように,一方の頭のなかにあるイメージを相手が同じように思い描けるように言い表す場合に describe を使います。
もしこの文章を As mentioned in the guidelines とした場合は,describe のように内容の詳細や重要度には関係なく,単に話のなかで触れられている事実だけを表します。
相手に細かく内容を説明したのであれば described it to him,ただ話題にした,あるいは少し言及した程度であれば mentioned it to him と使い分けることができますね。
問題
(1)サイバーフォビアとは,コンピューターに恐怖感を抱いている人を表す用語である。
(2)上記で述べたように,我々はより精密なウイルスの検出法を細かく調べた。
ヒント
※(1)は「~を表すために使われる用語」と考えて。
※(2)は「上記で述べられたように」と考えて。
※「細かく調べた」は look into(細かく調べる,検証する)を使ってみましょう。
- サイバーフォビア(=コンピューター恐怖症) cyberphobia
- 精密な accurate
- ウイルス virus
- 検出 detection
解答例
(1)Cyberphobia is a term used to describe those who have a fear of computers.
(2)As described above, we looked into more accurate methods of virus detection.
ミニ解説
(2)の例文は日本語と英語の違いがよく表れている文章です。日本語で「述べたように」と言う場合,describe でも,前回の解説に登場した mention でも,どちらの意味でも通用します。わざわざ説明しなくても,話し手がどのようなことを話したかはそれまでの流れで了解済みです。しかし,英語では通常,そのような曖昧さは好まれません。そのため,例文のように As described above とあれば,より精密なウイルス検出法とはどのようなものなのか,どのような方法を用いてどういう手順で行われるのかといった具体的な検証内容が,詳細に記述されていると理解できます。一方,As mentioned above とあれば,具体的な記述はされていないが検証を行ったことが述べられている,と理解することができます。
ほかにも,日本語で「述べたように」と表現するのに,As discussed above が使われることもあります。discuss の本来の意味は「論議する」ですから,describe のように具体的なイメージを言葉で表すわけではありませんが,mention よりも深く論議されたことを示しています。
例文
(Q)Could you briefly describe GWAS?
(A)GWAS refers to Genome-Wide Association Study, which is an examination of genetic variation across the entire human genome.
単語チェック
- briefly 簡単に
- GWAS genome-wide association study の略語。ゲノムワイド関連解析
- refers to ~のことを指す
- genetic variation 遺伝的多様性
- entire 全体の
- human genome ヒトゲノム
対訳
(Q)GWAS とは何か簡単にご説明いただけますか。
(A)GWAS はゲノムワイド関連解析といって,ヒトゲノム全体の遺伝的多様性を調べる研究のことです。
ミニ解説
会話例(Q)では,describe の代わりに explain を使っても構いません。ただ,同じ「説明する」という意味でも,両者には違いがあります。それは,説明を受けた相手がその説明をもとに絵が描けるかどうかという差です。たとえば,話している相手に一度も会ったことがなく,写真も見たことがない誰かの似顔絵を描いてもらうには,「目が二重」「顎が張っている」などの特徴を説明する必要があります。この場合に使われるのが describe で,explain は使いません。反対に,何か行動したときの理由や結果などを説明するときには explain を使いますが,describe は使いません。
《例文》
It is unclear how to explain the results, but it is easy to describe the results: A happened, then B and then C.
(どうすればその結果を説明できるのかわからないが,成り行きを述べることは簡単だ。まず A が起こり,次に B,そして C という具合だった)