気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!

2013年5月まで配信していたメールマガジン『気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!』の全バックナンバーを公開します。

主要医学ジャーナル4誌(N Engl J Med,JAMA,BMJ,Lancet)に掲載された100論文の全単語から,英文の“核”とも言える動詞だけを集めて使用頻度を解析。このうちランキング上位の動詞を,ランダムに取り上げています。

バイリンガルの富田氏が語る「単語の持っているイメージ,ネイティブが感じるニュアンス」は,まさに“目からウロコ”の感涙もの!
1つの動詞を3つの違った角度から学習できるので,その使い方が徐々に脳に染み込みます。

月~金曜にわたり,毎日1単語ずつ,全100単語分のバックナンバーを順次公開していきます。お楽しみに!!

No. 43

report

意味:報告する

単語のイメージ:何が起こっているか,起こったかを見ていなかった人に分かるようにする

論文での使われ方をチェック!▼

例文

(1)All hospitals currently reporting to the NCDR database were evaluated for this study.
(2)Studies involving the very elderly report high incidence of cataract.

単語チェック

  • NCDR database NCDR(National Cardiovascular Data Registry)データベース[NCDR は米国心臓病学会(ACC)の主導で行われている全米心血管疾患データ登録研究]
  • involving ~に関する
  • incidence 発生率
  • cataract 白内障

対訳

(1)現在NCDR データベースに報告しているすべての病院が,本研究で評価された。
(2)超高齢者に関する研究では,白内障の発生率が高いことが報告されている。

ミニ解説

report と report on は意味がほとんど同じなので,どう使い分けたらいいのか分かりにくいですね。(2)では他動詞の report が使われていますが,自動詞の report on に置き換えることも可能です。前置詞の on は,of や about と比べてより authority だとされており,他動詞の report よりも report on のほうがより専門的なニュアンスになりますが,それほど大きな違いはありません。
ただし,新聞などの報道機関が「~について報道する」という場合は,通常,権威的ニュアンスのない他動詞の report が使われ,子供が何かを報告する場合も report が good choice となります。

《例文》
Maria reported her summer holiday to the class.
(マリアは自分の夏休みのことをクラスで発表した)

一方,何らかの委員会など権威ある団体が「~に関して報告する」場合は report on が適しています。
(2)の超高齢者は very old person(s) と言いたくなりますが,現在,高齢者を old person と表現するのは失礼とされているので,the elderly,elderly people を使うのが better です。ただ,米国では,85歳以上の超高齢者のことを the oldest old と表記している驚きの政府刊行物もあるそうです。

英作文に挑戦!▼

問題

(1)平均10.5年のフォローアップ期間中の全死亡率について報告する。
(2)女性の30%が便通を改善する薬剤を使用していると報告した。

ヒント

※(1)は We を主語にして。
※(2)の文章の出だしは Thirty percent です。

  • 平均 average
  • フォローアップ follow-up
  • 全死亡率 overall mortality
  • 便通 bowel movements
  • 改善する improve
  • 薬剤 medication

解答例

(1)We report on overall mortality during an average of 10.5 years of follow-up.
(2)Thirty percent of the women reported using medication to improve bowel movements.

ミニ解説

(1)の report on を report に,(2)の reported を reported on に置き換えても問題ありません。両者は明快に使い分けできないことが多いのでスッキリしないかもしれませんが,言葉とはそういうものなのかもしれません。
report の副詞形の reportedly もよく見かける表現です。

《例文》
No-reflow is particularly associated with mechanical revascularization for acute MI and reportedly occurs in 11.5% of cases.
(非再灌流現象は特に急性心筋梗塞への機械的血行再建術と関連があり,報告によればその11.5%で発現する)

Reportedly, the big movie star left Paris three days ago.
(報道によると,その大物映画スターは3日前にパリを発った)

ほかに,一般用例でちょっと覚えておきたい使い方があります。これらは自動詞の report の用例になります。

《例文》
You should report to the police at once.
(君は直ちに警察に出頭すべきだ)

Mr. Smith reports directly to the CEO.
[スミス氏は CEO(最高経営責任者)直属の部下だ]

会話での使われ方をチェック!▼

例文

(Q)Are there any signs of recurrence?
(A)For now, no signs of recurrence have been reported in patients treated with neoadjuvant chemotherapy.

単語チェック

  • signs 徴候
  • recurrence 再発
  • For now 今のところ
  • neoadjuvant chemotherapy 術前補助化学療法

対訳

(Q)再発の徴候はありますか。
(A)今のところ術前化学療法を行った患者で再発の徴候は報告されていません。

ミニ解説

(A)の neoadjuvant chemotherapy は術前補助化学療法で,neo の付かない adjuvant chemotherapy は術後補助化学療法(または補助化学療法)と訳されます。
がん領域では,特殊な用語,特に略語が頻発します。基本的なものをまとめて整理しておきましょう。

  • CR(complete response) 著効,完全奏効,完全寛解
  • PR(partial response) 有効,部分奏効,部分寛解
  • SD(stable disease) (病勢)安定
  • RR(response rate) 奏効率(CR+PR の割合)
  • DCR(disease control rate) 病勢コントロール率(CR+PR+SD の割合)
  • PD(progressive disease) 進行,増悪
  • NE(not evaluable) 評価不能
  • OS(overall survival) 全生存期間
  • PFS(progression-free survival) 無増悪生存期間
  • TTP(time to progression) 無増悪期間(PFS とほぼ同じ意味)
  • RFS(relapse-free survival) 無再発生存期間
  • DFS(disease-free survival) 無病生存期間
  • TTF(time to treatment failure) 治療成功期間

(編集部・Rick McGuire)

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