2013年5月まで配信していたメールマガジン『気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!』の全バックナンバーを公開します。
主要医学ジャーナル4誌(N Engl J Med,JAMA,BMJ,Lancet)に掲載された100論文の全単語から,英文の“核”とも言える動詞だけを集めて使用頻度を解析。このうちランキング上位の動詞を,ランダムに取り上げています。
バイリンガルの富田氏が語る「単語の持っているイメージ,ネイティブが感じるニュアンス」は,まさに“目からウロコ”の感涙もの!
1つの動詞を3つの違った角度から学習できるので,その使い方が徐々に脳に染み込みます。
月~金曜にわたり,毎日1単語ずつ,全100単語分のバックナンバーを順次公開していきます。お楽しみに!!
No. 28
change
意味:~を変える,~を変更する,~が変化する
単語のイメージ:元とは違うものに変える
例文
(1)The exclusion criteria were changed from no previous statin therapy to no use of such therapy within the previous 3 years.
(2)The LDL cholesterol levels changed by -12.3% in the cholestyramine group, compared with +2.0% in the placebo group.
単語チェック
- exclusion criteria 除外基準
- statin スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬の総称。血中コレステロールや特定の脂質の量を改善する。特にLDLコレステロール低下作用が顕著)
- cholestyramine コレスチラミン(腸管内で胆汁酸と結合して血中コレステロールを低下させる。高コレステロール血症治療薬)
対訳
(1)除外基準を「スタチンの服用歴なし」から,「過去3年間のスタチン服用なし」に変更した。
(2)LDLコレステロール値の変化は,プラセボ群で+2.0%だったのに対し,コレスチラミン群では-12.3%であった。
ミニ解説
(1)では他動詞,(2)では自動詞として change を使っています。A から B に変わる(変える)ときは from A to B を後ろにつけ,どのくらい変えたか(変わったか)という変動幅を述べたいときは by ~ をつけます。
文中にマイナス( - )の数字が書かれることは,例文(2)のように比較対象のプラス( + )の数字が同文中にある場合を除き,好ましくありません。したがって,変化がマイナスだけである場合は,マイナス記号を書かずに済むよう,change の代わりに reduce や lower を用いるのがベストです。
《例文》
The HbA1c was reduced by 1.5%.
(HbA1cは1.5%低下した)
問題
(1)投与量は医師の判断で3mgから6mgに増やすことができるとした。
(2)これらの数値は3カ月の食事療法後,10±1.2 から7±4.5に変化した。
ヒント
※(1)試験方法を説明している文章です。could を使った受動態にしましょう。
※(2)「数値」を主語に,自動詞の change を使って。
- 投与量 dose
- 判断 discretion
- 数値 value
- 食事療法 dietary therapy
解答例
(1)The dose could be changed from 3 mg to 6 mg at the discretion of the physician.
(2)These values changed from 10+/-1.2 to 7+/-4.5 after 3 months of dietary therapy.
ミニ解説
change は名詞形でも頻出する単語です。名詞形を使った「~の変化」は,a change in ~ というように,前置詞 in がつく表現が多いですね。
《例文》
These patients showed changes in their QOL.
(これらの患者ではQOLの変化が示された)
a change of ~ との違いがわかりづらいところですが,多くの場合,of と in のどちらでも通用します。原則として,of は全体が変化するとき,in は全体のうちの一部が変化するときに使われます。たとえば,a change in policy は方針に変更や修正が生じること,a change of policy は従来のものを別のものに取り替える,つまり方針の転換という意味になります。a change of clothes も,別の服に取り替える,つまり着替えということですね。
例文
(Q)Did the mean level of LDL cholesterol change in the simvastatin-niacin group?
(A)Yes, it was reduced by 42% compared to the baseline.
単語チェック
- simvastatin シンバスタチン[スタチン系薬剤の一種。LDLコレステロール低下作用が強い。脂質異常症(高脂血症)治療薬]
- niacin ナイアシン(ニコチン酸ともいう。HDLコレステロール増加作用がある)
- baseline ベースライン,試験開始時
対訳
(Q)シンバスタチン-ナイアシン投与群の平均LDLコレステロール値は変化しましたか。
(A)はい,ベースラインと比べ42%低下しました。
ミニ解説
change 同様,「変える,変更する」という意味を持つ単語に alter がありますが,(Q)の change を alter に置き換えることはできません。alter にすると「平均LDLコレステロール値を変えましたか(改ざんしましたか)」という意味になり,とんでもない質問になってしまうので要注意です。change は「あるものから明確に変わる,実質的に変わる」というニュアンスですが,alter は「本元は変わらず,一部が変わる」というニュアンスです。例えば,to alter a dress は「服を身体に合うように直す」,to change a dress は「服を着替える」という意味になります。(編集部・Rick McGuire)