2013年5月まで配信していたメールマガジン『気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!』の全バックナンバーを公開します。
主要医学ジャーナル4誌(N Engl J Med,JAMA,BMJ,Lancet)に掲載された100論文の全単語から,英文の“核”とも言える動詞だけを集めて使用頻度を解析。このうちランキング上位の動詞を,ランダムに取り上げています。
バイリンガルの富田氏が語る「単語の持っているイメージ,ネイティブが感じるニュアンス」は,まさに“目からウロコ”の感涙もの!
1つの動詞を3つの違った角度から学習できるので,その使い方が徐々に脳に染み込みます。
月~金曜にわたり,毎日1単語ずつ,全100単語分のバックナンバーを順次公開していきます。お楽しみに!!
No. 23
initiate
意味:開始する,惹起する,立ち上げる
単語のイメージ:何かの始まりを表す行動
例文
(1)We initiated an exploratory study of the determinants of preventive health behavior.
(2)There are several differences between investigator-initiated and sponsor-initiated clinical research.
単語チェック
- exploratory study 予備(的)試験
- determinants 決定因子
- preventive health behavior 予防的健康行動
- investigator-initiated 医師主導型の
- sponsor-initiated 企業主導型の
- clinical research 臨床研究
対訳
(1)我々は,予防的健康行動の決定因子に関する予備試験を開始した。
(2)医師主導型と企業主導型の臨床研究には,いくつか相違点がある。
ミニ解説
医学論文では,試験や研究プロジェクトを「開始する」と表現する際に initiate がよく使われます。
(2)の investigator-initiated は「医師主導型」と訳されることが多く,この場合の investigator は治験責任医師を意味します。日本では,平成14年7月に成立した「薬事法の一部を改正する法律」で,医師(医療機関)が主体となって実施する治験制度が規定され,平成15年7月に施行されています。医師が企業とは独立して行う臨床研究の成果を承認申請に生かす方策として導入されたもので,企業から未承認の薬物や機器の提供を受けて研究することが可能になりました。これによって,欧米では標準的な医薬品でありながら,日本では採算が合わないために企業主導では実施されなかった臨床研究も,医師主導で実施できる道が開かれたわけです。
問題
(1)そのプログラムは,国連児童基金が1999年に開始した。
(2)日本の製薬企業が国外で立ち上げる臨床試験の割合は,劇的に増加している。
ヒント
※(1)は,受動態 be initiated by を使って。
※(2)の「劇的に増加している」は There has been a dramatic increase を使って。
- 国連児童基金 UNICEF(United Nations Children's Fund)
- 製薬企業 pharmaceutical company
- 国外で outside Japan
- 割合 percentage
- 劇的に dramatically
解答例
(1)The program was initiated by UNICEF in 1999.
(2)There has been a dramatic increase in the percentage of clinical trials initiated outside Japan by Japanese pharmaceutical companies.
ミニ解説
initiate は「新たに何かを始める」と表現する際によく使われる動詞ですが,プログラムや試験を開始する場面で用いるときは,「立ち上げる」という訳の方が文脈に合うこともあります。
(2)の解答例にある initiated は initiate の過去分詞で,文の核となる名詞 trials を後ろから修飾しています。こういう修飾の仕方は英語では頻繁に登場します。文章の構造が崩れにくい利点があり,後ろから説明をつけ足すことができるので便利です。日本語では前から名詞を修飾することが多いですが,英訳する場合は,逆に後ろから修飾することを考えてみましょう。
例文
(Q)How about the general status of the patients when you initiated the treatment?
(A)General status was good, though most patients had chronic diseases.
単語チェック
- general status 全身状態
- chronic diseases 慢性疾患
対訳
(Q)治療開始時の患者の全身状態はどうでしたか。
(A)慢性疾患のある人が多かったですが,全身状態は良好でした。
ミニ解説
status は,複数形を「statuses」としている辞書もありますが,ほとんど単数形でしか使われない名詞です。全身状態には複数の因子が含まれるので statuses としたくなりますが,単数形が正解です。健康状態がよいことを表現するときは,good の他に well という言い方もありますが,両者の違いは形容詞と副詞というだけではなく,使う場面が微妙に異なり,ネイティブスピーカーにとっても相当な難所のようです。例えば,病気から回復して元気になったときに健康状態を聞かれた場合,I am well と言うと「元気になりました」といった感じが出るので自然です。そのような背景がない場合は,I am good の方がよりしっくりします。通常,good は「something または someone の状態がよい」ことを表現するときに使い,well は「something または someone がいかにうまく何かをするか」を表現するときに使う,といった違いがあります。
《例文》
Your English is good.
(あなたは英語が上手だ)
She is a good tennis player.
(彼女はテニスがうまい)
Our parents think we speak English well.
(両親は私たちが英語をうまく話すと思っている)
She did extremely well on the exam.
(彼女は試験のできが非常によかった)
(編集部・Rick McGuire)