2013年5月まで配信していたメールマガジン『気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!』の全バックナンバーを公開します。
主要医学ジャーナル4誌(N Engl J Med,JAMA,BMJ,Lancet)に掲載された100論文の全単語から,英文の“核”とも言える動詞だけを集めて使用頻度を解析。このうちランキング上位の動詞を,ランダムに取り上げています。
バイリンガルの富田氏が語る「単語の持っているイメージ,ネイティブが感じるニュアンス」は,まさに“目からウロコ”の感涙もの!
1つの動詞を3つの違った角度から学習できるので,その使い方が徐々に脳に染み込みます。
月~金曜にわたり,毎日1単語ずつ,全100単語分のバックナンバーを順次公開していきます。お楽しみに!!
No. 15
use
意味:使用する,使う,服用する
単語のイメージ:『使う』という単純な行動
例文
(1)Patients with arrythmia who used drug A had a much better survival than patients who used drug B.
(2)Brain surgeons often use a Gamma Knife(R) to treat tumors that are smaller than three centimeters in diameter.
※(R):registration symbolの略。米国での商標登録済みを意味する。
単語チェック
- arrythmia 不整脈
- survival 生存
- surgeon 外科医
- Gamma Knife ガンマナイフ(転移性脳腫瘍をはじめとする様々な脳疾患に有効なガンマ線による定位放射線照射治療装置。病変部を選択的に治療することが可能)
- tumor 腫瘍
- diameter 直径
対訳
(1)A薬を服用した不整脈の患者は,B薬を服用した患者よりも良好な生存が得られた。
(2)脳外科医は,直径3センチ未満の腫瘍の治療にしばしばガンマナイフを使用する。
ミニ解説
useは「使用する」「利用する」と訳すことが多い動詞ですが,患者や一般の人を主語にして目的語に薬剤名がくる場合は,(1)のように「服用する」と訳すこともできます。名詞形の use も医学論文で頻繁に出てきますね。
《例文》
Rates of dietary supplement use vary by age, gender, and race.
(栄養補助食品の使用率は,年齢,性別,人種によって異なる)
問題
(1)A薬はXX病治療に広く使われている。
(2)我々は,その解析を行うために多変量分散分析を使用した。
ヒント
- 広く widely
- 解析 analysis
- 多変量分散分析 multivariate analysis of variance(MANOVA)
解答例
(1)Drug A is widely used for the treatment of XX disease.
(2)We used a multivariate analysis of variance (MANOVA) to perform the analysis.
ミニ解説
use は医学論文で極めて出現頻度の高い動詞なので,能動態でも受動態でも作文できるようにしておきたいものです。現在分詞の using もよく出てきます。(2)は「解析を行った」ことが言いたいポイントなら,using を使った以下の例文がおすすめです。因みに analysis の複数形は analyses になります。
《例文》
The analysis was performed using a MANOVA.
(その解析はMANOVAを使って行われた)
ここで出てくる多変量分散分析(MANOVA)は,従属変数が多変量である場合に使われる分散分析です。分散分析とは,例えばA,B,Cの3群について比較するのに,AB間,AC間,BC間をそれぞれ検定するのでなく,3群まとめて比較する解析法で,仮説検定の統計学的手法のひとつです。
例文
(Q)Did you use steroids as a pretreatment?
(A)Yes, we used them to prevent chemotherapy-induced nausea and vomiting.
単語チェック
- pretreatment 前処置,前治療
- chemotherapy-induced 化学療法による
- nausea 悪心,吐き気
- vomiting 嘔吐
対訳
(Q)前処置としてステロイドを使用しましたか?
(A)はい,化学療法による悪心・嘔吐を予防するために使用しました。
ミニ解説
use は「使う」という行動を単純に表す言葉なので,いろいろな場面で用いることができます。
(Q)で質問している相手は医師ですから,use の「使用する」は「服用する」ではなく「投与する」の意味合いになります。「投与する」は他に administer もよく用いられますが,これはその人が何かに対して責任を負っていることを意味する単語で,use のように患者が主語なら「服用する」になるといった柔軟性はありません。因みに,自己投与と言いたいときは,自己注射(self-injection)も含めて self-administration が使えます。また,use は口語調で,administer は文語調だという違いもあります。(編集部・Rick McGuire)