2013年5月まで配信していたメールマガジン『気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!』の全バックナンバーを公開します。
主要医学ジャーナル4誌(N Engl J Med,JAMA,BMJ,Lancet)に掲載された100論文の全単語から,英文の“核”とも言える動詞だけを集めて使用頻度を解析。このうちランキング上位の動詞を,ランダムに取り上げています。
バイリンガルの富田氏が語る「単語の持っているイメージ,ネイティブが感じるニュアンス」は,まさに“目からウロコ”の感涙もの!
1つの動詞を3つの違った角度から学習できるので,その使い方が徐々に脳に染み込みます。
月~金曜にわたり,毎日1単語ずつ,全100単語分のバックナンバーを順次公開していきます。お楽しみに!!
No. 11
confirm
意味:裏付ける,確認する
単語のイメージ:確固たるものにする
例文
(1)These long-term data confirm the benefits of adding rituximab to chemotherapy.
(2)Epidemiologic studies confirm the high prevalence of gastroesophageal reflux disease.
単語チェック
- long-term 長期(追跡)の
- data データ,結果
- rituximab リツキシマブ(マウスとヒトのキメラ型抗CD20モノクロナールIgG抗体。分子標的治療薬の一種で,わが国ではCD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫などに適応がある)
- chemotherapy 化学療法
- Epidemiologic 疫学の
- study 調査,研究
- prevalence 有病率
- gastroesophageal reflux disease 胃食道逆流症(GERD)
対訳
(1)今回の長期(追跡)結果から,リツキシマブと化学療法の併用は有益であることが裏付けられた。
(2)疫学調査(の結果)は胃食道逆流症の有病率が高いことを示している。
ミニ解説
confirm には,契約などを「承認する」,決心を「固める」といった意味がありますが,医学論文では,目的語の内容が研究や調査によって裏付けられたときによく使われます。
(1)は,論文の Conclusion で書かれる文章を想定しています。日本語では「裏付けられた」と訳すのが自然ですが,英文では,いろいろな検討を行った末の「現在の/その論文の」結論なので,現在形がよいチョイスとなります。
(2)では,confirm は that 節をとることもできますが,(例えば confirm that GERD is highly prevalent),ほぼ同じ意味が confirm +目的語で表現できるならば,簡潔な文を選んだほうがよいでしょう。名詞形の confirmation を使った文もありますね。
《例文》
The results of this small open-label study need confirmation in large randomized trials.
(この小規模オープンラベル試験の結果は,大規模なランダム化比較試験で確認する必要がある)
問題
(1)我々は85%の患者で増悪を確認した。
(2)先行試験の結果から,この分子標的治療薬の安全性は確認されている。
ヒント
※(2)は現在完了形を使って。
- 増悪 disease progression
- 先行試験 previous trial
- 分子標的治療薬 molecular-targeted agent
解答例
(1)We confirmed disease progression in 85% of the patients.
(2)The results of previous trials have confirmed the safety of this molecular-targeted agent.
ミニ解説
confirmは,主語を調査(study)や結果(result)あるいは著者らを表す we にした形で,論文によく登場します。(1)は過去形,(2)は現在完了形で解答例を出しました。英語ネイティブでない我々にとって,過去形と現在完了形の違いはわかりづらいですが,基本的には,過去形は過去に発生した出来事を表すときに用い,現在完了形は過去に発生した出来事が今現在とつながりを持っている場合に用いられます。
《例文》
I worked there 6 years.
[私はそこで6年間働いた(今は働いていない)]
I have worked there 6 years.
[私はそこで6年間働いている(今も働いている)]
現在完了形は論文の Introduction の部分で見かけますが,Methods や Results で当該研究に言及するときは過去形が使われます。
例文
(Q)How did you confirm homozygosity of the mutation?
(A)We confirmed it by primer extension.
単語チェック
- homozygosity ホモ接合型[染色体の中の特定の遺伝子座(場所)の対立遺伝子(母親由来と父親由来の遺伝子)が同一であること。異なる場合はへテロ接合型と言う]
- mutation 変異
- primer extension プライマー伸長法(遺伝子解析法の一種)
対訳
(Q)変異がホモ接合型であることをどうやって確認したのですか。
(A)プライマー伸長法によって確認しました。
ミニ解説
質疑応答では,I ではなく we を主語にした回答文がよく用いられます。研究チームを代表して発表しているのだから当然ですが,質問されたことを自分1人が行った場合でも we が適切です。畏れ多いですが,これは英国女王が使われる,いわゆる royal we(王族の we)と呼ばれる we とよく似ています。英国女王は国民の代表という立場から,ほとんど一人称の I は使わず,自分の気持ちを表す際も We are not amused(楽しくありません)といった具合に,we を主語にして話されるそうです。とはいえ,質疑応答で演者が個人的な意見を述べるときは,さすがに royal we ではなく一般的な I が主語になります。(編集部・Rick McGuire)