2013年5月まで配信していたメールマガジン『気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!』の全バックナンバーを公開します。
主要医学ジャーナル4誌(N Engl J Med,JAMA,BMJ,Lancet)に掲載された100論文の全単語から,英文の“核”とも言える動詞だけを集めて使用頻度を解析。このうちランキング上位の動詞を,ランダムに取り上げています。
バイリンガルの富田氏が語る「単語の持っているイメージ,ネイティブが感じるニュアンス」は,まさに“目からウロコ”の感涙もの!
1つの動詞を3つの違った角度から学習できるので,その使い方が徐々に脳に染み込みます。
月~金曜にわたり,毎日1単語ずつ,全100単語分のバックナンバーを順次公開していきます。お楽しみに!!
No. 9
indicate
意味:指摘する,示す,適応がある
単語のイメージ:見つけられるように手を上げる
例文
(1)Odds ratios greater than 1 indicate increased risk and odds ratios less than 1 indicate a decreased risk.
(2)The results indicated that there was no association between vildagliptin use and angioedema.
単語チェック
- Odds ratio オッズ比
- risk リスク
- association 関連性
- vildagliptin ビルダグリプチン[新規の経口糖尿病治療薬(DPP-4阻害薬)]
- angioedema 血管性浮腫
対訳
(1)オッズ比が1より大きければリスク上昇を,1より小さければリスク低下を表す。
(2)その結果によりビルダグリプチン(の使用)と血管性浮腫には関連性のないことが示された。
ミニ解説
indicate は,手指などで「指し示す」,数値や計器等が「表示している」,あるいは「(that 以下を)~だと示す」という意味があります。(2)は「結果」が主語ですが,「人」が主語の場合は,「述べる,指摘する」と訳すことができます。
(1)では increased risk には "a" がなく,decreased risk には "a" が付いています。これは間違いではなく,文章の前半分と後ろ半分がほとんど同じ(単調)になるのを避け,ちょっと変化を持たせるためなのです(つまりちょっとセンスのいい文章にする)。非英語圏の者には,こういった使い方は難しいですが,知識として知っておくとよいでしょう。もちろん両方とも "a" がなくても問題ありません。
一方,論文中の図表に関する但し書きのところで,unless otherwise indicated という表現をときどき見かけますが,unless は否定の条件を表すので,「特に記載がない限り」「特記しない限り」という意味になります。
問題
(1)姿勢の悪さは脊椎に問題があることを反映している可能性がある。
(2)早期の開頭手術が必要だった。
ヒント
※「脊椎」は,姿勢の悪い「人」の脊椎なので a person's を付けて。
※「必要である」は be indicated(指し示される)の拡大訳。
- 姿勢 posture
- 脊椎 spine
- ~に問題 a problem with ~
- 開頭手術 craniotomy
解答例
(1)Poor posture may indicate a problem with a person's spine.
(2)Early craniotomy was indicated.
ミニ解説
(1)の「~に問題がある」を英作文しようとしたら,まず there is a problem with~ というフレーズが思い浮かぶのではないでしょうか。しかし,ここは "there is" を省いて簡潔にした解答例がお勧めです。基本的には,少ない単語数で済むのであれば,その方が明快で,よりよい英文だといえます。a person's は a patient's に言い換えることもできますが,one's とはなりません。one's にすると,読者について述べている印象を与えてしまいます。以下の例文は,読者が外科医であれば one's で 問題ないですが,あまりフォーマルな言い方ではありません。
《例文》
A surgeon's clinical success rate is closely associated with one's experience with a given surgical procedure.
(外科医の臨床的成功率はその手術経験と密接に関係する)
indicate は「(治療などの)適応がある」のほかに,「(治療などの)必要性を示す,指示する」という意味でも使われます。(2)の場合は開頭手術なので,be indicated は「必要である」となります。また,治療法や薬剤の「適応」には名詞形の indication が使われます。
《例文》
The FDA has approved expanded indications for atorvastatin.
(FDA はアトルバスタチンの適応拡大を承認した)
例文
(Q)What could influence circulating levels of sex hormone-binding globulin?
(A)Animal data indicate that genetic variation may influence them.
単語チェック
- circulating levels 血中濃度
- sex hormone-binding globulin 性ホルモン結合グロブリン
- genetic variation 遺伝的多様性
対訳
(Q)性ホルモン結合グロブリンの血中濃度は何によって左右されると考えられますか。
(A)動物実験のデータでは,遺伝的多様性が影響している可能性が示されています。
ミニ解説
(Q)は could を入れることで「どのような可能性が考えられるのか」というニュアンスを出すことができます。data は複数形(単数形はdatum)ですが,単数形に対する動詞を使うことも可能です。ただしフォーマルではありません。また,a data とは言わないので注意しましょう。
(Q)の influence を文章の最後に持っていくと,「~の血中濃度は何に影響を与えているのか?」と全く違う意味になってしまいます。以下の例文で,その違いを確認しておきましょう。少々物騒ではありますが・・・。
《例文》
How can you affect a car?(車に対してどんなことができますか)
You can smash its window. (窓を壊すことができます)
How can a car affect you?(車によってどんなことが起こり得ますか)
It can run over you. (人が轢かれることもあります)
(編集部・Rick McGuire)