2013年5月まで配信していたメールマガジン『気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!』の全バックナンバーを公開します。
主要医学ジャーナル4誌(N Engl J Med,JAMA,BMJ,Lancet)に掲載された100論文の全単語から,英文の“核”とも言える動詞だけを集めて使用頻度を解析。このうちランキング上位の動詞を,ランダムに取り上げています。
バイリンガルの富田氏が語る「単語の持っているイメージ,ネイティブが感じるニュアンス」は,まさに“目からウロコ”の感涙もの!
1つの動詞を3つの違った角度から学習できるので,その使い方が徐々に脳に染み込みます。
月~金曜にわたり,毎日1単語ずつ,全100単語分のバックナンバーを順次公開していきます。お楽しみに!!
No. 2
conduct
意味:行う,実施する
単語のイメージ:何かをするときに音頭を取る
例文
(1)This study was conducted according to the principles of the Declaration of Helsinki.
(2)We conducted a multicenter, double-blind, randomized controlled trial.
単語チェック
- according to ~に従って,則って
- principles 原則,指針
- Declaration of Helsinki ヘルシンキ宣言(世界医師会が1964年に採択した「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」のこと。インフォームド・コンセント取得はその基本原則のひとつ)
- multicenter 多施設
- double-blind 二重盲検
- randomized controlled trial ランダム化比較試験(RCT)
対訳
(1)この試験はヘルシンキ宣言の原則に則って実施された。
(2)我々は多施設二重盲検ランダム化比較試験を実施した。
ミニ解説
動詞の conduct には,「導く」「案内する」「指揮する」といった意味がありますが,医学論文では,臨床試験などを「実施する」ときにこの単語がよく使われます。試験を主語にした受動態(be conducted)が多く,著者らが“自分たちが試験を実施した”とアピールしたい場合は We を主語にした能動態になります。
名詞の conduct には,「行為」「運営」といった意味もあり,論文ではthe conduct of the trial(試験の実施)のような形がよく登場します。
問題
(1)データ解析は STATA(R) 統計ソフトウェアを使って行われた。
(2)我々は1,364人の2型糖尿病患者について調査を行った。
※(R):登録商標(registered trademark)のこと。
ヒント
※「~患者」は with を使って。
※「~について調査」は a survey of... を使って。
- 解析,分析 analysis
- 統計の statistical
- 2型糖尿病 type II diabetes mellitus
- 患者 patient
解答例
(1)Data analysis was conducted using STATA(R) statistical software.
(2)We conducted a survey of 1,364 patients with type II diabetes mellitus.
ミニ解説
「~を行った,実施した」と言いたい時に使われる単語はいくつかありますが,conduct には「運営する」というイメージがあるので,調査や試験を「行う,実施する」と言いたい時にぴったりな単語です。
研究方法の記載で,統計解析に使うソフトウェアについて言及したい場合は,受動態(be conducted)のあとに usingを入れて解析ソフト名を書くのが一般的です。with the use of も使われますが,using は直接的でかつ行動をイメージさせる表現なので,with the use of と比べより明快な印象になります。
解答例(1)の analysis は単数形(語尾が is)ですが,複数形は語尾が es(analyses)となるので注意しましょう。
例文
(Q)Are there any other reports on such symptoms?
(A)I don't think so, this is a unique case. It may be necessary to conduct a multicenter cooperative study in the future.
単語チェック
- symptoms 症状
- multicenter cooperative study 多施設共同研究
対訳
(Q)そのような症状の報告はほかにありますか。
(A)いいえ,これは特異な症例だと思います。今後は,多施設共同研究の実施が必要になると思われます。
ミニ解説
ここでは答えの冒頭を No ではなく I don't think so としています。No と言うと,「関連する報告はすべて調べたので明確に否定できる」というほど断定的なイメージになります。I don't think so と言えば,「私の知る限りでは」というニュアンスが入るので使いやすいですね。
It may be necessary to ~は,「~する必要があるのではないか」と言いたいときに便利な表現です。(編集部・Rick McGuire)