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抗PD-1抗体が治療歴のあるメラノーマ,非小細胞肺がん,腎細胞がんで腫瘍縮小効果を示す
Anti-PD-1 (BMS-936558, MDX-1106) in patients with advanced solid tumors: clinical activity, safety, and a potential biomarker of response

抗PD-1抗体のBMS-936558は,がんに対する新たな免疫療法剤として注目されている。今回,その第I相試験から,3種類のがん腫で腫瘍縮小効果が得られることが示された。米国のジョンズ・ホプキンス大学 Suzanne Topalian氏が報告した。
PD-1は,腫瘍細胞を排除する役割を担うT細胞の表面に発現する受容体。このPD-1に腫瘍細胞表面に発現するPD-L1が結合すると,T細胞の働きが弱まる。抗PD-1抗体のBMS-936558は,このPD-1とPD-L1の結合を阻害し,T細胞を正常に機能させる薬剤だ。
対象は,1~5つのがんの全身治療の既往がある進行した非小細胞肺がん,メラノーマ,腎細胞がん,去勢抵抗性前立腺がん,結腸直腸がんの患者296人。うち47%は3つ以上の全身治療歴がある。これらの患者に,8週間を1サイクルとしてBMS-936558を2週間ごとに静注し,1サイクルごとに反応を評価した。投与期間は,最大12サイクルとした。
一次エンドポイントは本剤の安全性と忍容性である。何らかの有害事象は全体の70%で確認され,グレード3または4の有害事象は14%の患者にみられた。有害事象のために治療を継続できなかった患者は5%だった。免疫療法剤でよくみられる有害事象では,発疹(12%),下痢(11%),そう痒(9%),間質性肺炎(3%)などが多かった。間質性肺炎では非小細胞肺がん患者2人,結腸直腸がん患者1人が死亡した。一方で,大腸炎,肝炎,下垂体炎,甲状腺炎の発生は1%未満だった。
二次エンドポイントの腫瘍縮小効果に関しては,メラノーマ,非小細胞肺がん,腎細胞がん患者でそれぞれ28%,18%,27%の奏効が確認された。24週間以上の病勢安定をみたのはそれぞれ6%,7%,27%だった。去勢抵抗性前立腺がん,結腸直腸がんの患者には,奏効はみられなかった。
一方,PD-L1の発現が本剤への反応性を予測する指標となるかどうかを評価するため,試験前に42人の患者に生検を行ったところ,42人中25人でPD-L1が発現しており,そのうちの9人に腫瘍縮小効果がみられた。しかしPD-L1の発現がなかった17人には効果がみられず,本剤による治療効果がPD-L1の発現の有無と関連していることを示唆する結果となった。
Topalian氏は,これまで免疫療法で効果のなかった非小細胞肺がんに奏効があったことは注目に値すると述べ,さらに “It’s exciting to see this degree of anti-tumor activity from a single agent among patients with a range of cancers that had progressed despite standard therapies” と語った。(神尾 希)
■試験の概要
対象 | 以下を満たす進行性のがん患者296人 ・非小細胞肺がん,メラノーマ,腎細胞がん,去勢抵抗性前立腺がん,または結腸直腸がん ・全身症状(ECOG PS:パフォーマンス・ステイタス)0~2 ・1~5つの全身治療の既往 |
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方法 | 多施設オープンラベル非無作為化試験(第I相試験) ・2週毎に静注(0.1~10.0mg/kg) ・8週間を1サイクルとして最大12サイクルまで,あるいは完全奏効,疾患進行, または忍容できない毒性がみられるまで治療を続行 |
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結果 <一次エンドポイント>
*3%以上の患者にみられ,かつ免疫療法剤によくみられるもの
*完全奏効+部分奏効 |