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新規抗血小板薬vorapaxarの追加投与で心血管イベント二次予防効果が高まるも出血リスクは増大
Thrombin Receptor Antagonist in Secondary Prevention of Atherothrombosis(TRA2P-TIMI50試験)
標準的な抗血小板治療を受けている心筋梗塞などの虚血性疾患既往患者に,新規の抗血小板薬vorapaxarを追加投与することで,心血管イベントリスクが低下することが示された。しかし一方で,出血リスクは高まり,その上昇幅は脳卒中既往患者で特に顕著だった。米国のブリガム・アンド・ウィメンズ病院 David A. Morrow氏による報告である。
本試験は日本を含む32カ国1,043の施設が参加して行われた。対象は心筋梗塞,虚血性脳卒中,末梢動脈疾患のいずれかの既往があり,アスピリンなどの抗血小板治療を受けている患者26,449人。これらの患者がvorapaxar群とプラセボ群に無作為に割り付けられた。試験途中,脳出血のリスクが増大したため,データ安全性評価委員会はすべての脳卒中既往患者に対する試験を中止するよう勧告。これにより,その後の試験は脳卒中の既往のない患者でのみ継続された。
有効性の複合エンドポイントである3年後の心血管死+心筋梗塞+脳卒中の発生は,vorapaxar群はプラセボ群と比べて有意に13%低下した。サブグループ解析では、全体の67%を占める心筋梗塞既往患者で20%の有意な低下が認められ、脳卒中既往患者や末梢動脈疾患既往患者では有意差はみられなかった。一方,安全性については,vorapaxar群はプラセボ群に比べ出血リスクが高まり,特に脳内出血は脳卒中既往患者で2.55倍に増大した(非脳卒中既往患者は1.55倍)。
Morrow氏は今回の結果から,“Adding this new class of antiplatelet therapy reduced the risk of new cardiac events in stable patients, especially among the subset of patients with a prior heart attack” と述べ,この新薬でベネフィットが得られる患者は限られるとし,“Of the groups we studied, the benefit was compelling to us only in patients with a prior heart attack” と結んだ。(越山みどり)
■試験の概要
対象 | 心筋梗塞,虚血性脳卒中,末梢動脈疾患のいずれかの既往があり,標準的な抗血小板薬治療を受けて安定している患者26,449人 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
方法 |
国際共同・二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験 |
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追跡期間(中央値) | 30カ月 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
結果(3年後,カプラン・マイヤー法による)
GUSTO:Global Utilization of Streptokinase and t-PA for Occluded Coronary Arteries Trial |