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パゾパニブによる維持療法で進行卵巣がんの無増悪生存期間が延長(AGO-OVAR16試験)
Randomized, Double-Blind, Phase III Trial of Pazopanib vs Placebo in Women Who Have Not Progressed After First-Line Chemotherapy for Advanced Epithelial Ovarian, Fallopian Tube, or Primary Peritoneal Cancer: Results of an International Intergroup Trial
卵巣がんは,初回治療に高い奏効を示すにも関わらず,再発率が75~80%と高いのが特徴だ。だが,初回治療後に病勢進行がみられない進行卵巣がん患者では,パゾパニブによる維持療法が無増悪生存期間を有意に延長することが分かった。経口チロシンキナーゼ阻害剤パゾパニブは,卵巣がんの発生に関わる血管内皮増殖因子(VEGF)と血小板由来増殖因子(PDGF)の受容体を阻害する。進行卵巣がんに対するパゾパニブの有用性を検討した第III相試験の結果を,ドイツのエッセン・ミッテ病院Andreas du Bois氏が報告した。
本試験では,FIGO病期分類II-IV期で,初回手術後5サイクル以上のプラチナ/タキサン併用療法を行い,病勢進行のない進行卵巣がん患者940人を,最長で24カ月にわたりパゾパニブ800mgを1日1回服用する群(パゾパニブ群)とプラセボを服用する群(プラセボ群)に1:1の割合で無作為に割り付けた。
一次評価項目の無増悪生存期間は,パゾパニブ群が中央値17.9カ月,プラセボ群が中央値12.3カ月と,パゾパニブ群で有意に延長した(p=0.0021)。サブグループ解析の結果は主解析と一致しており,特に65歳未満,全身状態(ECOG PS:パフォーマンスステイタス)が0,漿液性がんでパゾパニブ群の無増悪生存期間が良好だった。二次評価項目の生存期間については,初期の解析だったが,両群とも中央値には未達だった。安全性では,高血圧,肝毒性,好中球減少,下痢がパゾパニブ群で特に多かった(31% vs 6%,9% vs 1%未満,10% vs 2%,8% vs 1%)。またパゾパニブ群では,58%の患者で投与量が減らされており,特に治療開始初期に投与量を減らした患者が多かった。パゾパニブ群の1日投与量の中央値は607.4mgだった。
du Bois氏は結論の中で,パゾパニブによる維持療法は進行卵巣がん患者の無増悪生存期間を有意に延長するが,このクラスの薬剤特有の有害事象が早期の治療中止や投与量の減量をもたらしているため忍容性の予測が今後の研究課題だと語り,”If pazopanib is approved for ovarian cancer, many patients will experience longer disease-free and chemotherapy-free periods. During this time, the patient keeps control over the disease instead of the disease having control over patient’s life” と述べて発表を締めくくった。(中川 ゆり子)
■試験の概要
対象
進行卵巣がん患者940人
・FIGO病期分類II-IV期
・組み入れ前までに進行なし(無病生存,完全奏効,部分奏効,安定)
・5サイクル以上のプラチナ/タキサン併用療法(腹腔内投与,術前化学療法,集中投与を含む)
・最終の抗がん剤投与より3~12週間の経過
方法
国際多施設共同二重盲検無作為化プラセボ比較試験
・パゾパニブ群:468人(最長24カ月間,パゾパニブ800mgを1日1回投与)
・プラセボ群:472人(最長24カ月間,プラセボを1日1回投与)
追跡期間(中央値)
24カ月
結果
<一次評価項目>
パゾパニブ群 (月) |
プラセボ群 (月) |
ハザード比 (95%信頼区間) |
p値 | |
無増悪生存期間 (中央値) |
17.9 | 12.3 | 0.766 (0.643~0.911) |
0.0021 |
●サブグループ解析(無増悪生存期間)
ハザード比 |
||||
65歳未満 | 0.770 (0.629~0.943) |
|||
65歳以上 | 0.743 (0.528~1.046) |
|||
ECOG PS = 0 | 0.791 (0.645~0.971) |
|||
ECOG PS =1/2 | 0.729 (0.522~1.018) |
|||
漿液性がん | 0.759 (0.622~0.927) |
|||
漿液性がん以外の全がん | 0.775 (0.543~1.106) |
|||
FIGO II/III かつ 腫瘍径 1cm 以下 | 0.821 (0.652~1.034) |
|||
FIGO III かつ 腫瘍径 1cm超, または FIGO IV |
0.778 (0.556~1.088) |
|||
<二次評価項目>
ハザード比 (95%信頼区間) |
||||
生存期間 | 0.994 (0.747~1.321) |
|||
※観察期間中央値24.3カ月で,中央値には未達。
<安全性>
パゾパニブ群* n(%) |
プラセボ群** n(%) |
|||
グレード3/4の有害事象 | ||||
高血圧 | 147(31) | 26(6) | ||
・グレード2を含む高血圧 | 248(52) | 80(17) | ||
肝毒性 | 45(9) | 3(<1) | ||
好中球減少 | 47(10) | 7(2) | ||
下痢 | 39(8) | 5(1) | ||
無力症/疲労 | 13(3) | 1(<1) | ||
血小板減少 | 12(3) | 3(<1) | ||
手掌・足底発赤知覚不全 | 9(2) | 1(<1) | ||
頭痛 | 8(2) | 3(<1) | ||
腹痛 | 8(2) | 5(1) | ||
タンパク尿 | 6(1) | 2(<1) | ||
関節痛 | 5(1) | 3(<1) | ||
*パゾパニブ群:N=477
**プラセボ群:N=461