2013年5月まで配信していたメールマガジン『気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!』の全バックナンバーを公開します。
主要医学ジャーナル4誌(N Engl J Med,JAMA,BMJ,Lancet)に掲載された100論文の全単語から,英文の“核”とも言える動詞だけを集めて使用頻度を解析。このうちランキング上位の動詞を,ランダムに取り上げています。
バイリンガルの富田氏が語る「単語の持っているイメージ,ネイティブが感じるニュアンス」は,まさに“目からウロコ”の感涙もの!
1つの動詞を3つの違った角度から学習できるので,その使い方が徐々に脳に染み込みます。
月~金曜にわたり,毎日1単語ずつ,全100単語分のバックナンバーを順次公開していきます。お楽しみに!!
No. 95
receive
意味:受け取る,受ける,投与される
単語のイメージ:受動的に受け取る
例文
(1)Patients who received at least one dose of sorafenib were included in the final analysis.
(2)Cortical areas directly receive sensory inputs from the thalamus.
単語チェック
- sorafenib ソラフェニブ(腎細胞がんなどに効果のある分子標的治療薬)
- Cortical areas 皮質領
- sensory inputs 感覚入力(人の身体に嗅覚や触覚など,さまざまな感覚的な刺激が入ること)
- thalamus 視床(複数は thalami)
対訳
(1)ソラフェニブを少なくとも1回投与した患者は最終解析に含めた。
(2)皮質領は視床から直接的に感覚入力を受け取る。
ミニ解説
receive のイメージは,「受動的に受け取る」です。自分から積極的に受け取りに行くわけではありません。(1)の receive は take に変えてもよさそうですが,ここでは「~を処方された患者」(~を投与した患者)と言いたいのですから,receive が適切です。take は「(自ら)取る」という意味を持つ能動的な動詞です。したがって,薬やサプリメントを実際に(自ら)「服用する,飲む」と言いたいときは take が使われます。
《例文》
I take vitamin Ds and iron tablets everyday.
(私は毎日ビタミンDと鉄の錠剤を飲んでいます)
この take を receive にすると,「どこから? 何のために毎日薬を受け取っているの?」と聞きたくなる,意味の分からない文章になってしまいます。
receive とよく似た意味の動詞に accept,obtain がありますが,それぞれニュアンスには違いがあります。
- receive = 受動的。受ける,受け取る。
- accept = 能動的。受け入れる。受け入れるかどうかのチョイスあるいは権限が受け入れ側にある。
- obtain = 能動的。手に入れる。何かを望むことがまずなければならない。
例えば,I am receiving a call は「電話に着信がある(どこかから電話が自分のところに入ってくる)」という意味になります。コレクトコールの場合,相手から電話が入ること(receive)を止めるわけにはいきませんが,通話料金を払うことを受け入れる(accept)かどうかは着信側が決めることです。
《例文》
I will accept the advice to receive treatment A.
[(提示された)治療Aを受ける(receive)ことを受け入れ(accept)ます]
I want to take drug A. How can I obtain it?
[A薬を飲み(take)たいのですが,手に入れる(obtain)ことはできますか]
問題
(1)計画通りの用量を投与したにも関わらず,効果は得られなかった。
(2)放射線療法を受けなかった女性15人には手術が行われた。
ヒント
※(1)の「効果」は response を使って。
※(2)は「15人の女性」を主語にして。
- 計画通りの planned
- 用量 dose
- 放射線療法 radiotherapy
解答例
(1)Despite receiving the planned dose, response was not obtained.
(2)Fifteen women who did not receive radiotherapy underwent surgery.
ミニ解説
(1)の response は positive,negative のどちらの場合にも使われる便利な単語です。(1)は,薬を投与して「よい反応」かどうかをみるということですから,「効果」と意訳するのが自然です。
《例文》
The patient is responding well to the treatment.
(その治療はよく効いている)
The patient is not responding to the treatment.
(患者はその治療に反応していない)
negative な response には,こんな使い方もあります。
《例文》
Patient is responding.
(患者に意識はあります)
Patient is not responding.
(患者に意識はありません)
例文
(Q)What was the highlight of this meeting?
(A)A novel agent for disease Z has received a lot of attention and that may be the highlight for me.
単語チェック
- meeting 学会
- novel agent 新薬
対訳
(Q)この学会のハイライトは何でしたか。
(A)Z病の新薬に多くの注目が集まっていました。私にとってもそれがハイライトと言えるかもしれません。
ミニ解説
今回の会話例のように,一般論を聞いているような質問に対し,欧米人は一般論だけでなく個人的感想も一緒に答えてくることがよくあります。一般論を求められて一般論しか答えないと,「ではあなたはどう思いますか」とたたみかけられるのが常です。と言うのも,Why ask a person something if you don't want his opinion? という考え方が根底にあるからなのです。経験的には,一般論を求められて一般論しか答えない場合は,それに賛同していないことが多いようです。
(A)の「注目が集まる」は,receive attention が最もフォーマルな言い方です。gather attention はカジュアルな雰囲気があり,attract attention は attract(魅了する)の意味からも分かるように,非常に主観的な言い方です。したがって,学会の発表で「注目を集めた」場合は,receive attention が適切です。receive は「受賞する(receive an award)」というときにも使われるように,attention を得るに足る根拠がある,というニュアンスがあります。