気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!

2013年5月まで配信していたメールマガジン『気楽に1分~脳に染み込む医学論文・頻出単語!』の全バックナンバーを公開します。

主要医学ジャーナル4誌(N Engl J Med,JAMA,BMJ,Lancet)に掲載された100論文の全単語から,英文の“核”とも言える動詞だけを集めて使用頻度を解析。このうちランキング上位の動詞を,ランダムに取り上げています。

バイリンガルの富田氏が語る「単語の持っているイメージ,ネイティブが感じるニュアンス」は,まさに“目からウロコ”の感涙もの!
1つの動詞を3つの違った角度から学習できるので,その使い方が徐々に脳に染み込みます。

月~金曜にわたり,毎日1単語ずつ,全100単語分のバックナンバーを順次公開していきます。お楽しみに!!

No. 73

recognize

意味:認識する,認める

単語のイメージ:エビデンスを伴う認証

論文での使われ方をチェック!▼

例文

(1)In addition to smoking, exposure to asbestos, family history, racial difference and many other factors have been recognized as risk factors for lung cancer.
(2)There are many scientists who study how botulinum neurotoxin B recognizes its protein receptor.

単語チェック

  • exposure 曝露
  • asbestos アスベスト
  • racial 人種の
  • factors 因子
  • lung cancer 肺がん
  • botulinum neurotoxin B ボツリヌスB型神経毒素(ボツリヌス菌が産生する神経毒素の一種。毒素の抗原性によりA~G型に分類される)
  • protein receptor タンパク質受容体

対訳

(1)喫煙に加え,アスベストへの曝露や家族歴,人種差,その他多くの因子が肺がんのリスクファクターとして認められている。
(2)ボツリヌスB型神経毒素がどのようにタンパク質受容体を認識するかについて,研究している科学者は多い。

ミニ解説

科学の世界では,recognize のイメージは「エビデンスを伴う認証」です。つまり,何らかのエビデンスに基づいて認識するという行為を表します。
次の例文は科学の世界の話ではありませんが,個人の頭の中で自分なりのエビデンスを照合して認証を行っているという意味合いから,「見覚えがある」という訳につながります。

《例文》
I recognized him from the photo.
(写真に写っている人に見覚えがある)

一方,医学など科学の世界では,皆に理解できる形で示されているエビデンスを基に認証することが必要です。
(1)では,recognized を identified や regarded,considered といった単語に置き換えることも可能です。ただし,identified は「確証されている」,regarded は「みられている」,considered は「考えられている」と少しずつニュアンスが異なります。(1)の各因子はエビデンスに基づくものであることから,これらの単語のなかでも recognized を使うのが最もふさわしいと言えます。

英作文に挑戦!▼

問題

(1)臓器移植法では,脳死は人の死とされている。
(2)アルコール依存症には適切な治療が必要だと認識することが重要である。

ヒント

※(2)は it を主語にしてみましょう。

  • 臓器移植法 Organ Transplant Law
  • 脳死 brain death
  • アルコール依存症 alcohol addiction
  • 適切な adequate

解答例

(1)In the Organ Transplant Law, brain death is recognized as human death.
(2)It is important to recognize that alcohol addiction requires adequate treatment.

ミニ解説

(1)の recognize は,前回のように他の単語に置き換えることができません。たとえば「みられている」と訳せる regarded も,ここでは使えません。regard はラテン語から派生している単語で,フランス語では「見る(= look)」という意味で使われています。look は主観ですからエビデンスは必要ありません。つまり,regard は科学的なことを表す単語ではないのです。
これに対し,recognize はエビデンスを伴います。これもラテン語に由来する単語で,re(再度)+ cogni (認知する)という組み合わせから派生しています。つまり,「本当に思っている通りのものか再度確認を取る」行為を表しています。(1)の文では,脳死を人の死として認めることが前提とされていますが,これを法的に確定するためには立証する必要があります。死を定義し,その定義に照らし合わせて初めて認証されることから,この文では regard など他の単語ではなく,recognize でなければいけないのです。

会話での使われ方をチェック!▼

例文

(Q)Why did you prescribe a nonsteroidal antiinflammatory drug for the patient?
(A)Because I recognized a typical sign of erythema nodosum which appeared to be caused by drug A.

単語チェック

  • prescribe 処方する
  • nonsteroidal antiinflammatory drug 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
  • erythema nodosum 結節性紅斑(脂肪織炎の一種で,下肢の伸側面に結節が形成されるのが特徴。関節痛と発熱を伴う)

対訳

(Q)どうしてその患者に非ステロイド性の抗炎症薬を処方したのですか。
(A)A薬が原因と思われる結節性紅斑の典型的兆候がみられたからです。

ミニ解説

(A)の recognize は,「兆候に気づいて処方した」という意味合いで使われています。したがって,「(ある出来事に)気づく」という意味の become aware of に置き換えることもできそうですが,それはNGです。become aware of は recognize と比べてカジュアルというだけでなく,主観的表現だという違いがあります。become aware of と recognize の違いがよくわかる例文を見てみましょう。

《例文》
The patient became aware of the itch on post-operation day 2, and the doctor recognized the rash as a reaction to drug X in the post-operation treatment.
[術後2日目,患者が痒みを感じ,医師はその(痒みの原因である)発疹が術後治療で使ったX薬に対する反応だとわかった]

この例文でわかるように,患者が症状を自覚(become aware of)した後,その原因が何かを調べて正体を突き止める(recognize)というのが正しいステップです。そのため,もし(A)で薬剤を処方した理由を述べるのに become aware of を使うと,まるで素人のような応答になってしまうわけです。

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