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冠動脈バイパス術では,オフポンプはオンポンプに比べ術後合併症を抑制(PRAGUE-6試験)
Off-Pump Versus On-Pump Coronary Artery Bypass Graft Surgery in Patients with EuroScore≥6 (PRAGUE-6)
心臓手術の高リスク患者を対象とした試験において,人工心肺を使用せずに冠動脈バイパス術(CABG)を行うオフポンプ CABGは,人工心肺を使用するオンポンプ CABGに比べ,術後合併症の発症を有意に減らしたことを,チェコ・チャールズ大学のJan Hlavicka氏が明らかにした。
CABGを行う際にオフポンプとオンポンプのどちらがよいかを巡っては長年議論が続いており,これまではどちらの術式でも治療成績に大差はないという見解が多数を占めていた。しかし,従来の臨床試験ではさまざまなリスクレベルの患者が混在していたため,高リスク患者のみを対象とした臨床試験の実施が望まれていた。
本試験の対象は,心臓手術後の死亡率を予測するEuroScoreが6以上の,高リスクなCABG予定患者206人。これらの患者をオンポンプ群とオフポンプ群に無作為に割り付け,CABG施行後30日以内の死亡および合併症(急性心筋梗塞,脳卒中,透析を要する新たな腎障害)の発症頻度などを比較した。
一次エンドポイントである術後30日以内の死亡および合併症の発症頻度は,オフポンプ群でオンポンプ群に比べ有意に少なく,半分以下であった(9.2% vs. 20.6%,p=0.028)。個別にみると,急性心筋梗塞の発症がオフポンプ群で有意に少なく(4.1% vs. 12.1%,p=0.048),相対リスクは68%低下した。手術結果は,輸血率を除き,失血量や出血による再手術などについて両群間で有意な差はなかった。
これらの結果を受けて,Hlavicka氏は高リスク患者でのオフポンプCABGの有効性について “Our study shows that surgical revasculation of the heart without using the heart-lung machine can be beneficial for high-risk patients, especially older ones with many other disorders or diseases”と述べ,“Patients, especially the sicker and older ones, should know that there is an option to be operated off-pump with potentially better postoperative outcomes”と結んだ。(神尾希)
■試験の概要
対象
EuroScore が6以上のCABG予定患者 206人
方法
単施設無作為化比較試験
・オンポンプ群:108人
・オフポンプ群:98人
結果
<一次エンドポイント>
オンポンプ群* n(%) |
オフポンプ群 n(%) |
相対リスク (95%信頼区間) |
p値 | |
術後30日以内の総死亡+急性心筋梗塞+脳卒中+透析を要する新たな腎障害 | ||||
22 (20.6) |
9 (9.2) |
0.41 (0.19~0.91) |
0.028 | |
死亡 | 6 (5.6) |
4 (4.1) |
0.73 (0.21~2.58) |
0.623 |
急性心筋梗塞 | 13 (12.1) |
4 (4.1) |
0.32 (0.11~0.99) |
0.048 |
脳卒中 | 3 (2.8) |
2 (2.0) |
0.73 (0.12~4.35) |
0.726 |
透析を要する新たな腎障害 | 5 (4.7) |
1 (1.0) |
0.22 (0.03~1.85) |
0.163 |
*オンポンプ群:n=107
<二次エンドポイント>
オンポンプ群* | オフポンプ群 | 相対リスク (95%信頼区間) |
p値 | |
失血量中央値 |
485 (400) |
535 (350) |
-- | 0.577 |
輸血率 n(%) |
85 (80.2) |
61 (64.9) |
0.81 (0.68~0.97) |
0.017 |
出血による再手術/タンポナーデ n(%) |
9 (8.5) |
3 (3.2) |
0.38 (0.10~1.35) |
0.143 |
* IQR:四分位範囲