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標準治療ヘのエプレレノン早期追加で心不全のない急性ST上昇型心筋梗塞患者の心血管イベントが有意に減少(REMINDER試験)
Early Eplerenone Treatment in Patients with Acute ST-Elevation Myocardial Infarction without Heart Failure (REMINDER)
心不全のない急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,標準治療へのエプレレノン早期追加で,心血管イベントが有意に減少することが大規模臨床試験で分かった。フランス・ピチエ-サルペトリエール病院のGilles Montalescot氏が報告した
アルドステロン拮抗薬のエプレレノンは,既にEPHESUS試験において心筋梗塞発症後3~14日の左室収縮機能不全を伴う心不全患者,EMPHASIS-HF試験において左室収縮機能不全を伴う慢性心不全(NYHA心機能分類Ⅱ度)患者の総死亡をプラセボ群より有意に減少させることが報告されている。一方STEMI患者では,入院時のアルドステロンが高いほど死亡,心血管死,心筋梗塞の再発,心不全の新規発症や悪化,心室細動,蘇生された心停止が増加することも知られている。これには,アルドステロンの有害な影響(ナトリウム貯留,カリウムとマグネシウム枯渇による催不整脈作用など)が関与していると考えられている。
今回のREMINDER試験は,「エプレレノンの早期投与により,心不全や左室収縮機能不全のない急性STEMI患者の心血管転帰を改善する」という仮説を検証するために実施された。対象は心不全のない急性STEMI患者1,012名。これらの患者を診断後速やかにエプレレノン群とプラセボ群に無作為に割り付け,発症から24時間以内で,できれば12時間以内の早期に,エプレレノンまたはプラセボを投与した。2日目からは,両群とも標準治療も行った。一次エンドポイントは,心血管死,心不全による再入院または入院期間の延長,持続性心室頻拍または心室細動,1カ月後の左室駆出率≦40%,1カ月後の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)またはN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)の上昇の複合とした。
その結果,一次エンドポイントはプラセボ群の29.6%に対し,エプレレノン群で18.4%と有意に減少した(p<0.0001)。一次エンドポイントの項目別に見ると,BNPまたはNT-proBNPの上昇が有意に抑制されていた(p<0.0002)。
高カリウム血症(>5.5mmoL/L)は,プラセボ群の3.2%に対しエプレレノン群で5.6%と有意に高かった(p=0.09)。低カリウム血症(<3.5mmoL/L)はプラセボ群の5.6%に対しエプレレノン群で1.4%と有意に低かった(p=0.0002)。安全性について両群で差は見られなかった。
以上のように,STEMI発症24時間以内の標準治療へのエプレレノン追加は,心不全がなく左室機能不全でない急性STEMI患者の転帰を,プラセボよりも改善した。Montalescot氏は,「REMINDER試験はSTEMIに対するエプレレノンの早期投与の良好な安全性プロファイルを示した最初の大規模臨床試験である」と同報告をまとめた。また本試験の対象患者が心血管死のリスクが低く,かつ標準治療を受けていたことに触れ,“Despite this, a benefit was observed with eplerenone to prevent adverse outcomes and subclinical heart failure. Confirmation in a higher-risk population with a longer follow-up would be important to support this new strategy”と述べた。(松田隆志・医学ライター)
■試験の概要
対象
救急室または救急車内で,心不全のないSTEMIと診断された1,012人
※除外:駆出率<40%,心不全の既往,除細動器植え込み例,腎不全または推算糸球体瀘過量(eGFR)≦30mL/min/1.73m2,未治療の高血圧など
方法
無作為化二重盲検プラセボ対照試験
診断後,速やかに無作為化を実施し,STEMI発症24時間以内,できれば12時間以内の早期に初回量(25mg)を投与。
・エプレレノン群(506人)
・プラセボ群(506人)
※両群とも,無作為化から2日目以降は標準治療も行い,試験薬の投与量は25~50mgの範囲で血清カリウム値,eGFR値に基づいて決定した。
追跡期間(平均)
10.5カ月
結果
<一次エンドポイント> | ||||
エプレレノン群 | プラセボ群 | 補正ハザード比 | p値 | |
n(%) | n(%) | (95%信頼区間) | ||
心血管死+ 心不全による再入院または入院期間の延長+ 持続性心室頻拍または心室細動+ 1カ月後の左室駆出率≦40%+ 1カ月後のBNPまたはNT-proBNPの上昇* |
||||
93(18.4) | 150(29.6) | 0.57 (0.44~0.74) |
<0.0001 | |
・心血管死 | 2(0.4) | 2(0.4) |
0.52 |
0.60 |
・心不全による再入院または入院期間の延長 | ||||
7(1.4) | 11(2.2) | 0.56 (0.20~1.54) |
0.26 | |
・持続性心室頻拍または心室細動 | ||||
0 | 3(0.6) | -- | -- | |
・1カ月後の左室駆出率≦40% | ||||
21(4.2) | 20(4.0) | 1.08 (0.58~2.00) |
0.81 | |
・1カ月後のBNP>閾値* | ||||
81(16.0) | 131(25.9) | 0.58 (0.48~0.77) |
<0.0002 | |
*BNP>200pg/mLまたはNT-proBNP>450pg/mL(<50歳),>900pg/mL(50-75歳),>1,800pg/mL(>75歳) | ||||
<血清カリウム値の変化> | ||||
エプレレノン群 | プラセボ群 | p値 | ||
n(%) | n(%) | |||
|
||||
ベースラインから1カ月後の血清カリウム値の上昇(mmoL/L) | ||||
0.41±0.56 | 0.32±0.50 | <0.0001 | ||
高カリウム血症(>5.5mmoL/L) | ||||
28*(5.6) | 16**(3.2) | 0.09 | ||
低カリウム血症(<3.5mmoL/L) | ||||
7*(1.4) | 28**(5.6) | 0.0002 | ||
*エプレレノン群:n=498 **プラセボ群:n=496 |